【ニュース解説】アスベスト訴訟 請求期間は「亡くなった日から20年間」と地裁が判断
- アスベスト健康被害
【ニュース】アスベスト健康被害訴訟ができる期間は20年ですが、被害者が亡くなった場合、その始まりは発症した日なのか亡くなった日なのか、複数の裁判で争われています。
神戸地裁では今回、亡くなった日から20年とする判断を下しました。
ニュース概要
アスベスト(石綿)による健康被害を受け、病気を発症した場合、作業内容や作業時期などについて一定の条件を満たす場合には、国に損害賠償を求めることができます。
国に対する損害賠償を請求できる期間は発症したときから20年間ですが、最近、被害者が亡くなった場合、その期間は「病気を発症した日から20年」なのか「亡くなった日から20年間」なのか、複数の裁判で争われています。
アスベスト関連工場で勤務し、悪性胸膜中皮腫を発症した被害者について、診断されてからは20年経過し、亡くなってから20年経過する直前に、遺族が国に対して損害賠償請求の訴えを起こした事案で、国は発症から20年を経過していることを理由に、消滅時効が成立すると主張しました。
2026年4月24日、神戸地裁は、アスベスト健康被害で亡くなった被害者の家族が国を訴えた裁判において、裁判所は損害賠償を請求できる期間は「亡くなった日から20年」とする判断を下し、国の主張を認めませんでした。
このように発症や患者様の死亡から時間がたっていたとしても、裁判所が被害者側の訴えを認めることはあります。
もしご家族が病気で亡くなったが、その原因はアスベストであったかもしれない…とのお悩みがありましたら、ぜひ当事務所へご相談ください。
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アスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説
本件で、国側は、中皮腫が、予後が悪く、死亡に至る可能性が相当程度高い病気であり、行政上の決定によらなくとも医療機関による検査等によってり患が判明する疾患であることを理由として、「中皮腫の発症による損害」と「中皮腫を原因とする死亡による損害」とが質的に異なるとはいえず、被害者の損害賠償請求権の長期消滅時効の起算点は、中皮腫を発症した時点であり、訴訟提起時点では既に20年が経過していると主張しました。
これに対し、原告側は、過去の判例の判断に沿う形で、被害者の損害賠償請求権の長期消滅時効の起算点は、被害者の死亡日であると主張しました。
裁判所は、中皮腫の潜伏期間が40~50年程度と長いこと、標準的な治療法が存在しないこと、発症後の平均余命期間も長いとはいい難いことについて言及しながらも、「中皮腫発症による損害」と「中皮腫を原因とする死亡による損害」とは質的に異なり、中皮腫を原因とする死亡に基づく損害賠償請求権については、その死亡時に発生する、として、国の主張を認めませんでした。
アスベスト関連工場で勤務していた方が中皮腫を発症して、国に対して損害賠償請求を行った場合、条件を満たした場合に認められる賠償金は1150万円となっています。一方で、被害者が死亡して、遺族が賠償請求する場合、賠償金は1300万円となっています。被害者が生存している場合と死亡している場合で、賠償額の金額差は意外と小さいので、「中皮腫の発症による損害」と「中皮腫を原因とする死亡による損害」とが質的に異なるとはいえないという国の主張にも一定の根拠があるように見えますが、裁判所は明確に切り分ける判断をしています。
裁判所は、国の主張を前提とした場合、被害者が長期間生存してから死亡した場合、死亡したことについての損害賠償請求の期間が短くなったり、請求できなくなる可能性があるという問題点を指摘してます。
また、被害者が生きている段階で、死亡することを前提とした賠償請求をしなければならないとするのは、正義・公平の理念に反するとしています。
交通事故などで受傷した事案の損害賠償請求の場合でも、本人が生存している場合の損害と死亡した場合の損害は別の損害として考えます。死亡の可能性が高い重度の障害を負うようなケースでも異なりません。弁護士の立場としては、中皮腫を発症した場合に死亡に至る可能性が高いからといって、扱いを変えるのは妥当ではないと思いますので、今回の裁判所の判断は正しいと思います。
建設関係の仕事をしてアスベストを吸った方についても、一定の条件を満たす方については国に対する損害賠償請求権が認められており、現在は訴訟をしなくても賠償を受けられる建設アスベスト給付金制度が作られています。本件は、アスベスト関連工場で勤務していた被害者についての判断ですが、中皮腫で亡くなった被害者の遺族が建設アスベスト給付金請求する場合の判断にも影響する可能性があります。
アスベスト被害で亡くなった被害者の遺族の中には、病気だと分かってから長い時間が経っているから、被害について損害賠償請求をするのは無理だと思っている方がいます。しかし、今回の裁判所の判断でも示されているように、亡くなった時期によっては賠償請求が可能な場合があります。もし時間が経っていることを理由に手続きを迷われている方は、一度弁護士にご相談いただくのが良いと思います。
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