弁護士コラム

【ニュース解説】中皮腫による死亡時の時効起算点について争われたが、約1400万円の賠償が認められたアスベスト裁判

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公開日:2026年04月08日
更新日:2026年09月07日

【ニュース解説】中皮腫による死亡時の時効起算点について争われたが、約1400万円の賠償が認められたアスベスト裁判

アスベストに関する業務に従事し、アスベストを原因として病気になった場合、国に賠償金を求めることができます。

その期限について、従前の運用から変更された「発症した日」から20年という主張が国からなされていましたが、今回はその主張を覆す判決が東京地方裁判所で下りました。

その後、国は控訴していましたが、東京高等裁判所は2026年8月27日に国の控訴を棄却し、地裁の判決を維持すると言い渡しました。

ニュース概要

約16年にわたり仕事でアスベストを吸い込み、平成14年に悪性胸膜中皮腫となり、平成16年に亡くなった男性の妻が、国に対して「アスベストで夫が亡くなったこと」を原因とした慰謝料を請求する裁判を起こしました。

これに対し国は、中皮腫による死亡について、アスベストを原因とする損害賠償請求権は「発症した日」から20年で時効を迎えると、主張しました。

双方の主張に対し裁判所は、「中皮腫の発症による損害とこれを原因とする死亡による損害が質的に異なる」ため、アスベストが原因で亡くなったことに対する慰謝料の時効は「亡くなった日」からカウントダウンされると判断しました。
今回の裁判は、時効が過ぎる前に起こされているため、国に約1400万円の賠償金を払うよう、東京地方裁判所は命じました。

その後、国は控訴をしていましたが、東京高裁は控訴を棄却し地裁判決を維持しました。

本件を解決に導いたアスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説

【第一審について】
中皮腫によって亡くなった方の損害賠償の起算点は、従前から発症時とされた時からと国は主張していたものではありませんでした。
従前は死亡時からとされておりましたが、近年、中皮腫に関する損害賠償の遅延損害金の起算点を発症時とする高等裁判所の判断があり、それ以降、時効の起算点も同様に発症時とする主張が国から為されている状態です。

もっとも、遅延損害金の起算点と時効の起算点は別の議論であり、裁判例の集積や判断の方向性も異なっています。
語弊を承知で簡略化しますと前者は、被害者救済のために起算点を早める方向で、後者は被害者救済のために遅くする方向で判断が為されていました。
諸裁判例が苦心しながら、それぞれの方向性を持ちつつ、判断を積み重ねてきたにもかかわらず、その方向性を無視した現在の国の主張は、到底受け入れられるものではありませんでした。

また、中皮腫は、存命期間が短いとされる疾病です。しかし、懸命に治療され、発症後も生きられる方々が多くおられます。
その中で、発症したら死亡時までの損害が含まれるとする主張は、その間の人生を無視したものであり、損害の質が異なるとした東京地方裁判所の判断は妥当であると考えます。

本争点に関しては、既に高松高裁で国側の主張を認容する判断がされており、弊所が担当する事件ではありませんが、最高裁に上告されていると聞いております。
その中で、高松高裁とは別の判断を東京地裁が行ったことに関して、意義があると考えています。

【第二審について】
高松高裁が時効の起算点を『発症時』とする国側の主張を容認する判決を先に行っている中で、東京高裁によって時効の起算点が『死亡時』であると認められたことは、遺族の救済にとって大きな意義があると考えております。しかし、国がこの判決を不服として最高裁に上告することが予測されます。当事務所としては、本件の控訴審判決が維持されるよう、最高裁に対し主張・立証を尽くす所存です。

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本件を担当した弁護士
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河野 翔平 弁護士 (愛知県弁護士会所属)
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