マンションの大規模修繕を行う際、コンサルティング会社と施工業者(施工会社)が結託して、談合が行われることがあります。
談合が行われると、大規模修繕の請負代金が不当に高くなり、区分所有者や管理組合に不利益となってしまいます。談合の可能性が疑われる場合は、弁護士と協力して調査・確認を行うようにしましょう。
本コラムでは、マンションの大規模修繕で起こる談合について、管理組合が確認すべき事項や対応策・予防策などを、ベリーベスト法律事務所 建築訴訟専門チームの弁護士が解説します。
そもそも「談合」とは、複数の事業者が話し合い、特定の業務を受注する事業者や受注価格を、事前に合意しておくことをいいます。法律上、談合は独占禁止法が禁止する「不当な取引制限」のひとつであり、違法行為です。
マンションの大規模修繕工事については、複数の施工業者に対して相見積もりを取得するのが一般的です。しかし、相見積もり先の施工業者が談合を行っていると、工事費用を負担する区分所有者や、管理組合が不利益を被ってしまうおそれがあります。
以下では、マンションの大規模修繕で談合が起きてしまう理由や、それによって管理組合と区分所有者が受けるデメリット、談合の典型的な手口についてご説明いたします。
施工業者の立場からすると、建物の修繕について、受注価格をできる限り高く引き上げるほうが、より利益を得られます。
複数の施工業者が、大規模修繕工事の受注に名乗りを上げる場合、通常であれば施工業者間で競争が発生します。そこで、自分たちが工事を受注できるよう、管理組合に対し、受注価格を低く抑えて提示する、工事の品質を高める提案をするといった対策を行うでしょう。
しかし、そのような対策を行うと、工事を受注できても、施工業者の利益は減ってしまいます。そこで、施工業者の間で談合を行う動機が生じるのです。
談合をすれば、工事を受注する施工業者は、ほかの事業者と競争する必要がありません。事前に合意した高い価格で工事を受注でき、工事の品質を高める努力も不要です。
一方、ほかの施工業者は、その工事を受注できなくなりますが、同じく談合によって別の工事を受注させてもらう形で「持ちつ持たれつ」の関係が作られます。
このように、施工業者側の利益を増やすため、大規模修繕について談合が行われる可能性があるのです。
マンションの大規模修繕工事について談合が行われた場合、管理組合は不利益を受けるおそれがあります。
管理組合に参加する区分所有者は、大規模修繕の費用を負担します。修繕積立金が足りなければ、追加で費用を拠出するケースもあるでしょう。
大規模修繕工事について談合が行われると、その請負代金は不当に高くなる可能性があるため、区分所有者は、本来不要だったはずの出費を強いられてしまいます。
さらに、談合が行われると、価格競争だけでなく、工事の品質に関する競争も行われなくなります。その結果、粗悪な施工方法で、マンションの寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。
マンションの大規模修繕に関する談合は、コンサルティング会社を通じて行われるケースが少なくありません。
まずコンサルティング会社は、管理組合から極めて安い費用で設計監理業務を受託します。一見すると、コンサルティング会社が損をしていますが、談合で利益を得た施工業者からキックバックを受け取るので、採算は取れるようになっています。
コンサルティング会社は、複数の施工業者に裏で根回しを行います。そして、事前に調整した見積もり金額を提示するように指示します。
その後、コンサルティング会社は管理組合に対し、「相見積もりを取りました」と言って施工業者から提示された見積もりを示します。そこから、もっとも有利な施工業者を選択し、管理組合側を納得させようとします。
しかし、実際には公正な相見積もりが行われていないため、不当に高すぎる価格で大規模修繕工事の契約を締結させられてしまうのです。
マンションの大規模修繕を進めるにあたり、以下のような事態が生じた場合には、施工業者側で談合を行っていることが疑われます。ひとつでも当てはまる場合には、調査を行うようにしましょう。
特に、コンサルティング会社がおすすめする施工業者の資料が、明らかに作りこまれていると思った場合、ほかの事業者との談合の可能性がないか疑ってみるべきです。
ただし、管理組合だけで調査を行おうとすると、コンサルティング会社や施工業者が、談合の事実をごまかすおそれがあります。談合の調査をする場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
マンションの大規模修繕について談合が疑われる場合は、先述のとおり、弁護士に相談をしましょう。弁護士ができる主なサポートは、以下のとおりです。
弁護士に依頼すると、管理組合が保有するさまざまな資料や情報をもとに、談合の有無について調査と確認を行います。
弁護士は、これまでに談合と判断された過去の事例との比較等によって、談合の可能性があるかどうかについて調査・確認を進めることができます
マンションの大規模修繕についての施工業者の談合は、独占禁止法で禁止されている「カルテル」に該当します。カルテルについては、公正取引委員会が申告(通報)を受け付けています。
弁護士は、公正取引委員会へ申告する際のサポートを行うことが可能です。談合が疑われる理由を整理したうえで、それをまとめた申告書やその裏付けとなる資料を、公正取引委員会へ提出します。
弁護士が独占禁止法の要件を踏まえつつ、十分な資料をそろえて申告を行うことで、公正取引委員会が取り締まりに動く可能性が高まるでしょう。
参考:「独占禁止法違反被疑事実についての申告について」(公正取引委員会)
談合によって、管理組合や区分所有者が損害を被った場合は、コンサルティング会社や施工業者に対し、請負代金の減額請求、工事が遅れたことなどによる損害賠償を請求できる可能性があります。すでに工事請負契約を結んでしまっていても、状況によっては契約を解除できるケースもあります。
しかし、区分所有者や管理組合がこれらの対応をする際には、施工業者との交渉や裁判所に訴訟を提起する等の必要があります。交渉には精神的なストレスがかかり、訴訟には手続きを踏む必要があるため、慣れないと時間や労力がかかるでしょう。
弁護士は、施工業者との交渉や、訴訟に進む際の準備について、サポートを行うことが可能です。談合が不当であることを法的根拠に基づいて主張し、管理組合や区分所有者の利益を守るために尽力します。
マンションの管理組合や区分所有者が、大規模修繕の談合によって損害を被らないようにするためには、以下の予防策を講じておきましょう。
大規模修繕を行う際に談合を避けるためには、コンプライアンス意識が高く信頼できるコンサルティング会社や施工業者を選定することが大切です。
談合対策として、管理組合は、以下の事項を含むコンサルティング会社や施工業者の選定基準を定めておきましょう。
なお、弁護士に相談すれば、適切な選定基準の定め方について、アドバイスを受けられます。
「プロポーザル方式」とは、管理組合が求める工事の概要を伝えたうえで、各施工業者が具体的な工事内容や見積金額を提示して競う方式です。
プロポーザル方式では、施工業者ごとに工事内容が異なります。
「金額を変えるだけ」というわけにはいかないので、単に見積金額だけを提示させる方式に比べると、談合を防止しやすくなります。
悪質なコンサルティング会社は、プロポーザル方式を活用したいと伝えると、難色を示す可能性があります。その場合は、必要に応じて弁護士に相談しながら対応を検討しましょう。
管理組合としてコンサルティング会社や施工業者と契約を締結する際には、契約書に談合防止条項を定めておきましょう。
「談合防止条項」とは、談合が行われていないことを、コンサルティング会社や施工業者が表明・保証するものです。仮に談合が発覚した場合、管理組合は損害賠償請求や契約の解除ができるため、談合に対する抑止力として機能します。
契約書に談合防止条項を定める場合は、その内容について法的抜け漏れなどがないか、弁護士のチェックを受けるのが安心です。
理事会や修繕委員会において議論している内容が外部に漏れると、その情報がコンサルティング会社や施工業者に伝わり、談合に利用されてしまうおそれがあります。
情報漏洩を防ぐため、理事会や修繕委員会の情報管理ルールも定めておきましょう。情報管理ルールの適切な内容については、弁護士に相談すればアドバイスを受けられます。
マンションの大規模修繕について施工業者の談合が行われると、区分所有者は大きな不利益を受けてしまうおそれがあります。
少しでも談合の疑いがあるなら、すぐに弁護士へご相談ください。また、将来的な大規模修繕について談合の被害に遭わないように、あらかじめ弁護士へ相談しておくこともおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、マンションの修繕工事や管理に関するご相談を随時受け付けております。大規模修繕に関する談合について懸念があるマンション管理組合の担当者様は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。


