公共工事を請け負う施工業者にとって、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(公共工事品確法)」は、避けて通れない重要な法律です。
公共工事品確法は、ダンピング受注による品質低下や不払い・労働災害といった過去の問題を防ぐために制定され、施工業者の立場を守る法律でもあります。令和6年の改正(いわゆる「第三次・担い手3法」)では、発注者の責務(適切な発注関係事務・適正工期など)をより明確化し、現場の働き方改革や担い手確保を支援する内容が強化されました。
今回は、公共工事品確法の基本的な内容と施工業者が注意すべき実務ポイントをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
公共工事品確法は、公共工事の発注を決める際に、価格だけでなく品質や技術力を重視することを目的に制定された法律です。
以下では、公共工事品確法の概要や制定の背景、令和6年改正で強化されたポイントを説明します。
公共工事品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)は、国や地方公共団体が発注する公共工事において、「価格だけでなく品質・技術力を評価して契約を行う」ことを基本理念とする法律です。
この法律が制定された背景には、入札制度の弊害として生じた談合(参加者が落札予定者を事前に示し合わせて廉価で受注すること)やダンピング受注(契約最優先での赤字覚悟の受注)の問題がありました。
かつては、最低価格を提示した業者が落札する「価格最優先」の入札方式が主流で、結果的に施工品質の低下、労働環境の悪化、下請けへの不払い、さらには工事事故の発生などが相次ぎました。
これを是正するため、平成17年に公共工事品確法が制定され、公共工事における品質確保の基本原則が定められました。
これにより、発注者は価格だけでなく技術提案や公共工事の性格、地域の実情等に応じた適切な発注を行うことができるようになりました。
公共工事品確法は、その後も改正を重ね、平成26年、令和元年に続き直近の令和6年改正(いわゆる第三次・担い手3法)では、働き方改革や地域の環境整備、新技術活用、担い手確保の観点が盛り込まれ、法律の実効性がさらに高まりました。
公共工事品確法は、発注者の監督強化だけでなく、施工業者を守るための仕組みでもあります。
特に注目すべきは、以下の3つの柱です。
令和6年の「第三次・担い手3法」改正は、公共工事品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)・建設業法・入札契約適正化法の3法を一体的に見直したもので、次の3つを柱としています。
公共工事品確法は、施工業者に対して刑事罰などの直接的な罰則規定は設けられていません。しかし、品質確保責任や契約リスク管理の厳格化により、公共工事品確法を遵守しなければ企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。以下では、施工業者が注意すべきポイントを説明します。
公共工事品確法の中核をなすのが、施工業者に課される「品質確保責任」です。
公共工事では、契約どおりの品質を確実に確保し、完成後も社会資本として長く機能する成果物を提供することが求められます。
具体的には、
といった点が求められます。
また、発注者の責務(発注関係事務の適切な実施・体制整備など)および受注者の責務(技術的能力の向上・生産性向上・処遇改善など)が条文で規定されています。つまり、施工業者は、発注者からの無理な指示に対しても、品質を守る観点から合理的に意見を述べ、必要に応じて書面協議を求める姿勢が重要となります。
公共工事品確法の施行により、発注者側の審査基準も厳格化しています。
特に、国や地方自治体の入札では、「総合評価落札方式」が広く活用され、価格だけでなく以下の要素が考慮されます。
これにより、施工業者には「入札前の準備段階」から相応の体制整備が求められます。
特に、技術者の配置基準を満たさない場合や品質管理計画書の内容が不十分な場合には、入札参加資格の制限や評価減点といった不利益を受けることがあります。
公共工事品確法のもとでは、発注者が施工業者に対して技術的指導・監督を行う権限を持ちます。
工事の進捗・品質・安全体制などに問題がある場合、改善指示が出され、是正がなされないときは発注側の要領に基づく指名停止・参加資格制限などの対象となる可能性があります。
たとえば、
といった場合には、誠実な履行義務違反として行政的制裁を受けることもあります。
このように、公共工事品確法は直接的な罰則こそありませんが、契約上・行政上の制裁が実質的なリスクとして存在しています。
公共工事品確法には、刑事罰などの罰則規定はありません。
しかし、法令やガイドラインに反する行為があった場合、次のような「実質的な制裁」が課されることがあります。
特に、地方自治体では、過去の契約履行評価が次の入札に反映されるため、1件の不適切対応が今後の受注機会を大きく左右します。
直接的な罰則規定がない法律とはいえ、遵守しなければ企業経営を左右するほどのリスクが生じる可能性がある点に注意が必要です。
公共工事では、契約条件や工期、記録の不備がトラブルの原因となるケースが少なくありません。以下のチェックリストで、契約前・施工中・引き渡し後の各段階における注意点を確認しておきましょう。
契約内容を十分に精査せず受注すると、後々の紛争で不利になります。契約前に次の点を確認しましょう。
【ポイント】
発注者からの提示条件を鵜呑みにせず、「交渉の余地があるか」を確認しましょう。
公共工事品確法では、発注者にも適正な工期・契約を設定する責任が課されています。
施工段階では、品質と安全を確保するための記録と報告が重要です。トラブル発生時の証拠にもなるため、次の項目を必ず確認しておきましょう。
【ポイント】
記録は「後日の証拠」として非常に重要となります。
「記録していない=やっていない」と評価・判断されるリスクがあることを常に意識して行動しましょう。
引渡後も、一定期間は品質確保・情報引継ぎの責任があります。
後日の責任追及を避けるため、以下を確認しましょう。
【ポイント】
引渡後のトラブルは、「説明不足」から生じることが多いです。
契約書や品質記録をもとに、一貫した情報共有体制を構築しておきましょう。
公共工事は契約額が大きく、関係者も多いため、ひとたびトラブルが起きると被害が拡大しやすいのが特徴です。「発注者との話し合いで何とかなる」と考えて放置すると、損害や責任を一方的に負わされるケースもあります。
以下のような場面では、早期に弁護士へ相談することが重要です。
設計変更や追加工事が発生したにもかかわらず、書面での契約変更が行われない場合は要注意です。
公共工事では、原則として発注者による正式な承認書や協議書の取り交わしがなければ、請負代金の増額を請求することが非常に難しくなります。
「とりあえずやっておいて」といった口頭指示で工事を進めると、後に支払い拒否や瑕疵指摘を受けるおそれがあります。
弁護士に相談すれば、証拠保全や協議書面の作成支援など、後日の紛争を防ぐための法的対応が可能です。
発注者側の都合での工期短縮や、仕様変更が発生した場合、品質確保が困難な状況が生じることがあります。
このような場合、公共工事品確法に基づき「適正工期の確保」を求めることが可能です。
弁護士に相談すれば、発注者との協議記録を整備し、無理なスケジュール変更に対して書面での是正要求を行うなど、正当な対応を取ることができます。
品質低下が生じた際に「施工業者の責任」とされないためにも、早めの相談が不可欠です。
工事が完了しているにもかかわらず、発注者が「協議中」「検査待ち」などを理由に支払いを先延ばしするケースも見られます。
この場合、履行確認書や検査記録をもとに代金の請求が可能です。
弁護士に相談すれば、支払いの催告や遅延損害金の請求など、実効的な手段を取ることができます。
「相手が行政だから言いにくい」と遠慮せず、法に基づく正当な権利行使を検討しましょう。
発注者の都合により契約が一方的に解除された場合でも、施工業者には一定の補償を受ける権利があります。
特に、準備費用・資材費・人件費などがすでに発生している場合、損害賠償請求の対象となり得ます。
弁護士は、契約解除の有効性を確認し、補償請求に必要な証拠を整理します。
一方的な解除に応じてしまうと、後から金銭請求が難しくなるため、通知書受領の段階で早期に相談するのが望ましいでしょう。
引き渡し後に、発注者から「瑕疵がある」「設計どおりでない」などの理由で損害賠償を求められるケースもあります。
しかし、その原因が設計ミスや発注者側の仕様変更に起因している場合も少なくありません。
弁護士は、契約書・図面・試験記録などの証拠をもとに、責任範囲を明確化し、不当な請求を防ぐ支援を行います。トラブルが表面化した時点で早めに相談すれば、交渉段階での解決も十分に可能です。
公共工事は法令・契約のルールが厳格で、少しの対応ミスが大きな損失につながるおそれがあります。特に、設計変更・追加工事・支払い遅延・契約解除などの場面では、専門的な法的判断が欠かせません。
ベリーベスト法律事務所では、公共工事に精通した弁護士が、契約書のチェックから交渉・訴訟までサポートしています。公共工事に関する疑問や困りごとは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。


