自宅の新築だけではなく、商業施設やオフィスビル、マンションなどの建設工事においても、完成後に設計上の瑕疵(いわゆる設計ミス)が発覚するケースは少なくありません。
設計図書の不備や法令違反によって建物に瑕疵が生じると、安全性や機能面に深刻な影響を及ぼす可能性があります。被害を受けた発注者側としては、誰に責任を追及できるのか、どのように対応すべきかと頭を抱えている状況の方もいるでしょう。
本コラムでは、設計瑕疵に関する法的責任の基本、具体的な追及方法、責任追及の流れや注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
建物の設計段階に不備があり、後に瑕疵が発覚するケースがあります。適切に問題を対処するためにも、まずは、法律が定める設計責任と代表的な設計瑕疵の種類を理解しておくことが重要です。
建物の設計業務は、建築士法や建築基準法などの法律によって厳格に規定されています。
建築士法では、建築士は、設計図書の作成や工事監理を行う際、法令等を遵守し、依頼者に説明を行うべきことなどが定められています。建築士が適切な設計をすることで、依頼者や利用者の生命・健康・財産は守られていくのです。
また、建築基準法では、建物の構造、安全性、防火性能などの最低基準を定めており、設計段階からこれらを満たすことが必須です。
そのため、設計段階で法令を遵守していなかったり、構造上の不備があったりした場合、建築士に対して、設計責任を問うことができる可能性があります。
設計ミスと一口にいっても、その内容や性質はさまざまです。
| 主な設計瑕疵の類型 |
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① 法令違反による瑕疵 建築基準法の耐震基準や防火基準を満たさない設計が行われた場合など、法律違反が原因となるものです。重大な場合には、行政から建物の使用停止や是正命令が下されたり、依頼者から損害賠償を請求されるリスクもあります。 ② 設計図書の不備による瑕疵 設計図や仕様書に記載漏れや整合性の欠如があると、施工現場で誤解が生じ、結果的に建物の欠陥につながることがあります。 ③ 説明義務・周囲義務違反 十分な説明が行われなかったり、専門家として当然に行うべき助言を受けられなかったりした場合には、瑕疵とまでは認められないとしても説明義務違反の責任を問われることがあります。 たとえば、建築基準を満たしているが実用上問題が生じる可能性がある設計について、事前に説明がなかったケースなどです。 ④ 監理業務の不備による瑕疵 設計業務に加え、施工段階での工事監理も建築士の重要な役割です。建築士が監理を怠った結果、設計図通りに工事が行われず、建物に不具合が生じた場合には、監理業務を怠ったことにより瑕疵が生じたとして責任を追及することになります。 |
設計ミスが疑われる場合、まず確認すべきは「設計契約書」の内容です。なお、建築には、設計と施工を別の業者と別々に契約し、建築士に設計してもらった内容で、施工業者に施工をしてもらう設計施工分離の場合と、設計も施工も同一の業者が通常は1つの契約で行う設計施工一貫の場合があります。前者であれば、建築士とは設計委託契約と工事監理委託契約、施工業者とは工事請負契約となり、設計の瑕疵は設計委託契約における違反として扱われますが、後者であれば設計瑕疵も工事請負契約書における違反として扱われることになります。
契約書に、瑕疵が発覚した場合の責任分担や補償範囲が規定されていることがあれば、今後の対応方針を決める重要な手がかりとなります。
契約条項によっては設計者側が一定の責任を免れる規定を設けていることもありますが、免責規定がすべて有効になるわけではなく、法律上無効とされる場合もあります。
このように、設計瑕疵が発覚した際には、まず「法令に違反していないか」「設計契約の条項がどうなっているか」を確認することが、責任追及の第一歩となります。
設計瑕疵が明らかになった場合、施主は、設計者や施工業者に責任を追及することが可能です。ただし、設計ミスと施工ミスでは設計施工分離の場合には責任追及先が異なり、設計委託契約の条項によっても結果が変わります。
建物に瑕疵が発覚した場合、その原因が「設計段階」か「施工段階」かを区別することが重要です。
設計ミスに起因する瑕疵についても、設計施工一貫の請負契約が締結されていた場合には「契約不適合責任」を追及していくことになります。設計施工分離の場合には、設計委託契約は、請負契約であるというよりも、準委任契約であるというのが一般的な見解なので、善管注意義務違反による損害賠償請求により解決していくことが通常でしょう。
工事請負契約書に契約不適合責任を免除する条項が設けられている場合には、原則として責任追及をすることができません。
ただし、免責条項は絶対ではなく、施工業者に故意や重大な過失がある場合や法令違反・安全性を著しく欠く設計などは効力が制限される可能性があります。免責の有効性は契約内容や当事者の認識、不適合の程度などにより左右されるため、専門的判断が不可欠です。
したがって、免責条項があるからといってすぐに諦める必要はなく、早期に弁護士へ相談して請求の可否を確認するようにしましょう。
設計瑕疵が認められた場合、施主が行える請求手段は複数存在します。状況に応じて適切な方法を選択し、損害を最小限に抑えることが重要です。
設計施工一貫の請負契約の場合には、「履行の追完請求」ができます。これは、瑕疵を修正した正しい設計にやり直しをして、それに従った正しい内容の施工を求める内容となります。
発注者としては、追加的な費用を負担せず、問題解決を図れる点が大きなメリットです。
ただし、修正に時間がかかる場合や、工事がすでに進行している場合には実務上、対応が難しくなることもあります。
設計図の修正が現実的に困難な場合や、部分的な不備で建物の使用に支障がない場合には、報酬の一部を減額する「代金減額請求」が考えられます。
これは契約不適合によって成果物の価値が減少したことを補うものであり、請負人に過失がないときでも請求できるものです。
設計ミスが原因で工事費用の増加や修繕費用、営業開始の遅延による損失などが発生した場合には、契約責任に基づき損害賠償請求を行うことが可能です。
設計者が注意義務を怠ったことで施主に損害が生じたと認められる場合、追加工事費用や逸失利益を請求できるケースもあります。
重大な設計瑕疵があり契約の目的を達成できないときには、契約そのものを解除することも可能です。解除が認められると、設計者に対して報酬返還を求められるだけでなく、損害賠償をあわせて請求できる場合もあります。
ただし、解除は、最終的かつ強力な手段であるため、債務不履行の程度によっては解除までは認められず、損害賠償で対応するケースも多いのが実情です。
建物に瑕疵が生じており、それが設計ミスによるものだと考えられる場合、以下の流れで責任追及を進めるのが一般的です。
まずは、問題が本当に「設計ミス」によるものなのかを確認する必要があります。
建物の不具合が施工上の問題である可能性もあるため、建築士や第三者調査機関に依頼して原因を特定することが望ましいです。なお、調査報告書は、後の交渉や訴訟で重要な証拠となります。
次に、契約書や設計図書を確認します。
契約書には瑕疵が発生した場合の処理や契約不適合責任に関する条項、免責条項が記載されていることがあるため、請求の可否を判断する上で欠かせません。
契約不適合責任にも、善管注意義務違反による損害賠償責任にも「時効」があるため、請求可能期間を過ぎてしまうと責任追及ができなくなることに注意しましょう。
契約不適合責任の期間制限は、「種類または品質」に関する契約不適合と「数量」に関する契約不適合とで異なる定めが設けられています。
設計ミスによる瑕疵は、専門的な知識がなければ原因の特定や責任追及の可否を判断するのが困難です。
契約書の免責条項の有効性や時効の扱いなど、法的判断が求められる部分も多いため、早い段階で弁護士に相談することが推奨されます。
弁護士は、施主に代わって設計者・施工者との交渉を行い、裁判に発展する場合にも代理人として対応することが可能です。
調査や契約書確認を経て、責任追及が可能と判断できれば、契約不適合責任に基づく請求(履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除など)や、善管注意義務違反に対する損害賠償請求を行います。
交渉で解決できない場合には、調停や訴訟といった法的手段に進むこともあるため、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
設計ミスによる瑕疵は、建物の安全性や機能性に直結する重大な問題です。責任追及の可否は、契約書や設計図書の内容、法令違反の有無によって大きく変わります。
ベリーベスト法律事務所では、一級建築士と連携した建築訴訟専門チームが、法人施主の皆さまの権利を守るためにサポートします。全国対応可能で、Zoomなどのオンライン相談も実施しており、初回相談は60分無料(※現地調査等は別途費用)で承っています。
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