マンションは、多くの住民が共同生活を営む場であるため、さまざまなトラブルが起こりがちです。たとえば、管理費の使途が不透明で住民の不信感が募っている、建て替えや大規模修繕をめぐる話し合いが平行線のまま進まない、騒音やペットの飼育をめぐる近隣トラブルが絶えない、といったトラブルです。
こうした問題は、管理組合内での話し合いだけでは解決が難しいことも多く、また放置すると深刻化し、マンション全体の価値や居住環境にも悪影響を及ぼす可能性もあります。そのような時は、マンション問題に詳しい弁護士に相談すれば、トラブルの予防・解決を図ることが可能となるでしょう。
今回は、マンション管理組合にまつわる、主なトラブルの種類や弁護士に相談するメリット、実際に依頼した場合の流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
多くの人が住むマンションには、共同生活に関わるさまざまな問題やトラブルが生じます。以下では、マンション管理組合に関するトラブルをいくつか紹介します。
① 工事の内容や費用について合意が得られない
修繕積立金の用途、業者の選定、工事の必要性などで意見が割れるケースがあります。
② 施工不良・工事遅延が発生している
委託した工事が不適切だった場合、修補工事や損害賠償の額等について揉めることがあります。
① 管理費が使途不明になっている
会計報告が不透明で、管理費の支出先が不明なケースでは、住民の不信感が高まり、トラブルへと発展することがあります。
② 管理費を支払わない人がいる
管理費の滞納が続くと修繕費用や清掃費が不足し、マンションの維持管理に支障をきたします。
③ 理事会の不正運営
特定の理事が独断で決定を行うなど、民主的運営がなされない場合も問題になります。
① 廊下やエントランスに私物を置く住民がいる
消防法や管理規約に反していることを注意しても改善されない場合があります。
② 駐車場や駐輪場の無断使用をしている人がいる
登録していない車両や外部の利用者による占有などが問題になることがあります。
① 深夜の生活音やペットの鳴き声がうるさい
個人差がある「音」の問題は、感情的な対立に発展しやすく、解決が難航します。
② ベランダでの喫煙やバーベキューをして問題になる
匂いや煙の問題は、周辺住民に大きなストレスを与えます。
「ペット禁止」のマンションで犬や猫を飼うなど、規約違反があっても管理組合側の要請に住民が応じないことで対応に苦慮するケースがあります。
投資目的で所有している区分所有者と実際に居住している住民との間で意思の疎通が図れないこともあります。
マンションの竣工時にそもそも瑕疵があり、分譲後それが発覚してトラブルになる場合があります。共用部分にあたる外壁のタイルが施工ミスで剥落してきたなど、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、施工会社と交渉したり、管理者から施工会社に訴訟を提起することもあります。
管理組合で問題が起こった場合、構成員は、管理組合を退会することができるのでしょうか。以下では、管理組合の概要と退会の可否を説明します。
管理組合とは、共用部分(エントランス、廊下、外壁、エレベーターなど)の維持管理や修繕工事、規約の制定・変更などを目的に設けられる団体です。
構成員は通常、マンションの「区分所有者(=部屋の所有者)」であり、入居者(賃借人)は含まれません。
マンションを所有していると、自動的に「管理組合」の一員になります。これは区分所有法という法律に基づくもので、任意加入ではなく、法律によって当然に構成員となる仕組みです。
管理組合の活動が不透明だったり、理事会の運営に問題があったりする場合、「もう関わりたくない」と思う方もいるかもしれません。しかし、管理組合は強制加入の団体ですので、管理組合に不満があっても、退会することは原則としてできません。
「書面で退会届を出せば抜けられるのでは?」と思うかもしれませんが、たとえそのような届け出をしても、法的には無効です。
管理組合を離脱する唯一の方法は、所有する部屋を売って、区分所有者でなくなることだけです。
そのため管理組合に問題がある場合は、理事の交代を求める、総会で議題を提出する、弁護士などの専門家に相談するといった手段で解決を図る必要があります。
管理組合内に寄せられたトラブルの中には、自力での解決が難しいものもあります。そのような時は、弁護士に相談することで以下のようなメリットが得られます。
弁護士は法的トラブルが起こった場合の代理人ができます。
たとえば、大規模修繕工事を行う際に、請負った会社と何かトラブルが生じた場合、管理組合の代理人として、トラブルの解決にあたることができます。
当事務所は建築訴訟に関する専門チームを有しておりますので、建築訴訟に関する豊富な経験をもとに、修繕を請負う会社との交渉が可能です。
また、管理費や修繕積立金の滞納問題は、多くのマンション管理組合で発生しています。支払いを催促しても応じてくれない住民がいる場合、理事や管理組合だけで対応しようとしても限界があるでしょう。
このような場面で弁護士に依頼すれば、管理組合の代理人として対応してもらうことが可能です。内容証明郵便による督促、支払いに関する協議などを通じて、相手にプレッシャーを与えることができ、結果的に支払いに応じるケースも少なくありません。
また、話し合いに応じない相手に対しては、民事訴訟や強制執行などの法的手続きも視野に入れて行動できる点が大きなメリットです。
マンションには管理規約が定められており、これはいわば「マンション内の法律」です。管理費や修繕積立金の使途、理事の選任、総会の招集方法、禁止事項(ペットの飼育やバルコニーでの喫煙など)など、日常のルールが細かく定められています。
しかし、この管理規約は、法的な専門用語もあり、住民だけで内容を正確に解釈するのは困難な場合もあるでしょう。
弁護士であれば、管理規約を区分所有法や民法、判例などと照らし合わせて解釈し、法的に妥当な判断ができます。
また、規約が不明確でトラブルの原因となっている場合には、法的観点からの見直しや改正の助言を受けることも可能です。
単発でのトラブル相談だけでなく、管理組合として弁護士と顧問契約を結ぶことで、継続的な法的サポートを受けることも可能です。顧問弁護士がいれば、日常の管理運営から規約の見直し、トラブル発生時の対応まで、あらゆる場面で助言を得られます。
また、顧問契約を結んでいれば、トラブルが発生した際にも迅速かつ的確な対応が可能になります。住民からの苦情にどう対応すべきか、理事会がどこまで権限を行使できるのかなど日常的に発生する判断を、法律に基づいてサポートしてもらえるのは大きな安心材料といえるでしょう。
マンションのトラブルに関しては、弁護士に相談・依頼することが解決の近道です。以下では、弁護士に相談する場合の流れと解決までの流れを説明します。
① 事前予約が必要
多くの法律事務所では予約制を採用しています。電話やメール、事務所のWebフォームから予約できますので、事前に予約してから相談に伺いましょう。
相談料については、初回無料相談を実施している事務所もあります。
② 持参すべきもの
弁護士との相談時間は限られていますので、スムーズに本題に入るためにも以下のようなものを持参すべきです。
何を持参すべきかわからない時は、法律相談の予約時に確認するとよいでしょう。
① まずは協議による解決を模索
弁護士に正式に依頼した後は、まず相手方との協議(交渉)による解決を目指すのが一般的な流れです。
② 合意できなかった場合は法的手続きへ
協議による解決が不調に終わった場合は、次の段階として法的手続きを検討することになります。マンション管理組合のトラブルにおいては、以下のような選択肢があります。
手続きの選択肢や誰が請求の主体になるかという法的判断や進め方は、トラブルの性質や相手方の対応、証拠の有無などによって異なります。弁護士は、状況を総合的に判断し、コスト・スピード・実効性を考慮した最適な対応方針を提案します。
マンション管理に関するトラブルは、大規模修繕工事のトラブル、住民同士の対立や組合の不正、規約違反など多種多様です。これらの問題を放置すると、マンション全体の価値が下がることにもつながりかねません。
特に、管理組合が絡むトラブルは、区分所有法など関連法令、建築紛争に関する専門的知識が求められるため、早めに弁護士に相談することが円滑な解決への近道です。
大規模修繕工事でのトラブル、施工会社とのトラブル、管理費の滞納、騒音、共用部の不当利用、理事会運営の不備など少しでも問題を感じたら、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。


