令和5年度において、全国の地方公共団体が受理した騒音に係る苦情件数は1万9890件で、その内訳は「建設作業」が37.5%と最多でした。
騒音だけではなく、住宅の建築工事やリフォーム工事を行う施工業者は、近隣住民からのクレームや、施主からのクレームに注意しなければなりません。
本記事では、建築の際に施工業者がよく受けるクレームや、特に注意が必要なクレーム、具体的な対策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
出典:「令和5年度騒音規制法等施行状況調査の結果について」(環境省)
建設の工事現場においては、近隣住民からクレームを受けるケースがしばしば見受けられます。たとえば、以下のようなクレーム事例が発生します。
施工業者が建設現場におけるクレームを放置すると、クレームを寄せた近隣住民だけでなく、施主とのトラブルにも発展しかねません。
クレーム対策は事前の対策が重要ですが、もし近隣住民からクレームを受けたら、速やかに対応しましょう。詳しい対策は「3、建設現場・住宅工事に関するクレームへの対策」でご紹介しています。
新築住宅の建築工事やリフォーム工事に関しては、施主からクレームが入るケースもあります。主なクレーム内容と、特に注意したい「契約不適合責任」「瑕疵担保責任」について解説します。
住宅の建築工事やリフォーム工事に関して、施主から寄せられるクレームのよくあるパターンとしては、以下のような例が挙げられます。
「契約内容と異なる」場合、施工業者は施主に対して、契約不適合責任や品確法上の瑕疵担保責任を負う可能性があるので注意が必要です。
住宅の建築工事やリフォーム工事に不備がある場合、施工業者は施主に対して契約不適合責任を負います。
契約不適合責任とは、引き渡した目的物が契約内容に適合していない場合に、施工業者(請負人)が施主(注文者)に対して負う責任です。
住宅工事の欠陥に関し、施主は施工業者に対して、以下の方法により契約不適合責任を追及できます。
新築住宅の施工不備により、以下の部分につき瑕疵(かし:欠陥のこと)が生じた場合には、施工業者は施主に対して品確法※に基づく瑕疵担保責任を負います(同法第94条)。
※正式名称:住宅の品質確保の促進等に関する法律
品確法に基づく瑕疵担保責任の期間は引き渡しから10年で、短縮が認められていない点に注意が必要です。
建設現場や住宅工事に関するクレームをできる限り予防し、万が一クレームが生じた場合にも迅速に事態を収拾するため、施工業者においては以下の対策を行いましょう。
予告なしで建設工事を始めると、近隣住民からクレームが寄せられるリスクが高まってしまいます。
工事に着手する前に、工事の内容・スケジュール・苦情窓口などを近隣住民の方へチラシで配布したり、ポスターを貼るなどして周知しましょう。
近隣住民や施主からのクレームは、建設現場におけるミスに起因して発生することが多いです。
クレームのリスクを抑えるためには、現場担当者による慎重な施工が求められます。現場監督や作業員などに対して、十分慎重に施工するよう注意喚起をしましょう。
新築住宅について、施工業者が品確法上の瑕疵担保責任を負う場合、損害賠償などがきわめて多額に及ぶケースも珍しくありません。
品確法上の瑕疵担保責任については、住宅瑕疵担保責任保険に加入することにより、損害賠償責任などがカバーされます。予期せぬ施工ミスによって多額の損失を被る事態を防ぐため、住宅瑕疵担保責任保険への加入を検討しましょう。
実際に近隣住民や施主からクレームが寄せられた場合は、建築トラブルの対応実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士のアドバイスを受けることにより、法的な観点から迅速かつ適切な対応が可能となり、施工業者が大きな損害を被るリスクを抑えられます。
ベリーベスト法律事務所には、建築トラブルについて豊富な対応実績を有する弁護士が多数在籍しておりますので、業界・会社固有のトラブルにも対応が可能です。
建設現場や住宅工事に関するクレームに備えたいとお考えの際は、まずは、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
個別の案系対応のほか、月額制の顧問弁護士サービスもございますので、お問い合わせの際に弁護士にお尋ねください。
建設工事や住宅の欠陥に関して、施工業者に対して損害賠償が認められた裁判例を2つ紹介します。
さいたま地裁平成21年3月13日判決の事案では、建物解体工事の現場周辺に住んでいた住民20人が、施工業者に対して騒音被害を理由に損害賠償を請求しました。
さいたま地裁は施工業者に対し、原告20人中18人について、1人当たり10万円の損害賠償を命じました。
さいたま地裁は、騒音規制法の定めなどを参考とし、居住地の敷地において「85デシベル」を超えていたかどうかを、損害賠償請求を認めるか否かのボーダーラインとしました。
85デシベルは、走行中の電車内における騒音量などに相当し、大声を出しても会話が難しい程度の騒音量です。
(出典:「さいたま地裁平成21年3月13日判決」(裁判所))
名古屋地裁令和2年2月10日判決の事案では、注文住宅の雨漏りを理由に、施主が施工業者に対して損害賠償を請求しました。
名古屋地裁は雨漏りについて、以下の2つの理由を挙げて、施工業者の品確法に基づく瑕疵担保責任を認めました。
名古屋地裁は雨漏りによる損害として、調査および保守工事の費用として800万円、弁護士費用として80万円、計880万円の損害賠償を施工業者に命じました。
施工業者は控訴しましたが、その後、遅延損害金を含めた1400万円での和解が成立し、控訴が取り下げられたとのことです。
出典:「全相協つうしん JACAS JOURNAL No.196」(公益社団法人全国消費生活相談員協会)
建設現場や住宅工事に関して、近隣住民や施主からクレームを受けた場合には、弁護士と連携し、迅速な対応をすることが重要です。建築トラブルの実績ある弁護士が代理人としてクレーム対応を行うことにより、施工業者・建築業者の損害を最小限に止めることが期待できます。
ベリーベスト法律事務所は、建築トラブルに関する施工業者のご相談を随時受け付けております。また、
多数の施工業者と顧問契約を締結しており、建築トラブルへの対応実績は豊富です。また、一級建築士とも連携し、建設現場の実情に合わせて適切にご対応いたします。建築トラブルに強い顧問弁護士としてサポートも可能ですので、クレーム対応にお困りの際は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。