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    2025年07月02日
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    特定建設業者とは? 許可要件や一般建設業との違いを弁護士が解説
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    特定建設業者とは? 許可要件や一般建設業との違いを弁護士が解説

    建設業で下請けに工事を発注する際、一定の条件に該当する業者は、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けた「特定建設業者」とならなければなりません。

    特定建設業許可を得るには、厳格な要件を満たす必要があるほか、許可を取得したあとも建設業法上の義務を遵守する必要があります。

    本コラムでは、特定建設業と一般建設業の違い、特定建設業許可の要件や義務について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。また、特定建設業許可なく工事を進めてしまったときに起こることも紹介しています。無許可の工事で指摘を受けた場合の対処法も、併せて参考にしてください。

1、特定建設業者とは

特定建設業者とは、特定建設業を行う建設業者を指します。

そもそも建設業は、土木建築に関する工事(=建設工事)の完成を請け負う営業です(建設業法第2条第1項)。建設業は、「特定建設業」と「一般建設業」の2つに区分されます。それぞれの条件と違いについて紹介しましょう。

  1. (1)特定建設業となる条件

    特定建設業は、発注者から直接工事を受注したうえで、その工事について1件あたりの下請け代金が5000万円以上(建築工事業の場合は8000万円以上)の下請け契約を締結する建設業です(建設業法第3条第6項・第1項第2号、建設業法施行令第2条)。

    これに対して、特定建設業に該当しない建設業は、一般建設業となります(建設業法第3条第6項・第1項第1号)。

    要するに、一定金額以上の建設工事を下請け事業者に発注する「元請け」の事業者は、特定建設業者に該当します。
    一方、受注した工事を自ら行う場合や、孫請け以下の事業者は、一般建設業者です。

  2. (2)特定建設業と一般建設業の違い

    特定建設業も一般建設業も、国土交通大臣または都道府県知事の許可を得なければなりませんが、必要となる許可の種類が異なります(建設業法第16条)。

    • 特定建設業:特定建設業の許可が必要
    • 一般建設業:特定建設業または一般建設業の許可が必要


    特定建設業の許可を受けていれば、特定建設業および一般建設業のどちらも行うことができます。
    これに対して、一般建設業の許可だけ受けている場合は、特定建設業を行うことができません。

    特定建設業は、一般建設業と比べて幅広い建設工事を許容されるため、許可の審査は厳しく、許可を受けた後の義務も厳格です。審査の要件や義務については、2章3章で解説します。

2、特定建設業許可の要件

特定建設業の許可を受けるためには、以下の5つの要件を満たさなければなりません。

  1. (1)経営管理能力の基準に適合していること

    特定建設業の許可を受けようとする方は、建設業における経営業務の管理能力について、国土交通省令で定める基準に適合していなければなりません(建設業法施行規則第7条第1号)。

    具体的には、以下の要件をいずれも満たす必要があります(建設業法施行規則第7条)。

    • ① 常勤役員などのうち1人が、建設業に関する経営業務の管理責任者として5年以上の経験を有するなど、一定以上の経営管理経験があること
    • ② 適用事業所に該当するすべての営業所について、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の新規適用事業所の届け出を提出していること


    なお、一般建設業についても、上記が許可取得の基準となります。

  2. (2)不正や不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと

    以下に該当する方が、請負契約で不正または不誠実な行為をするおそれが明らかである場合は、特定建設業の許可を受けることができません(建設業法第7条第3号)。

    ① 法人の場合
    ・当該法人
    ・役員など(=法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者)
    ・支配人
    ・支店の代表者
    ・常時建設工事の請負契約を締結する事務所の代表者

    ② 個人の場合
    ・その者
    ・支配人
    ・支店の代表者
    ・常時建設工事の請負契約を締結する事務所の代表者


    なお、一般建設業についても、上記が許可取得の基準となります。

  3. (3)専任技術者を、営業所ごとに設置していること

    特定建設業の許可を受けるためには、専任の「特定営業所技術者」を営業所ごとに設置しなければなりません(建設業法第15条第2号)。

    特定営業所技術者とは、建設工事の請負契約の締結・履行の業務に関する技術上の管理担当者で、以下のいずれかに該当することが必要です。

    • ① 建設業の種類に応じた国家資格試験の合格者、または免許保有者
    • ② 許可を受けたい建設業にかかわる建設工事で、発注者から直接請け負い、請負代金額が4500万円以上であるものについて、指導監督的な実務の経験が2年以上ある者
    • ③ 国土交通大臣が、上記と同等以上の能力があると認定した者

    ※以下の建設業(=指定建設業)については、①または③のいずれかを満たす必要があります(建設業法施行令5条の2)。
    ・土木工事業
    ・建築工事業
    ・電気工事業
    ・管工事業
    ・鋼構造物工事業
    ・舗装工事業
    ・造園工事業


    一般建設業の許可を受ける際にも、営業所技術者を設置する必要がありますが、特定建設業許可を受けるために必要な「特定営業所技術者」は、営業所技術者よりさらに高度な知見や実務経験を求められます。

  4. (4)特定建設業の請負工事を行うに足りる財産的基礎を有すること

    特定建設業の許可を受けるためには、発注者と締結する請負契約で、請負代金額が8000万円以上のものを履行するに足りる財産的基礎を有していなければなりません(建設業法第15条第3号、建設業法施行令第5条の4)。

    具体的には、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

    • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
    • 企業の短期的な支払い能力を示す「流動比率」が75%以上であること
    • 資本金の額が2000万円以上であり、かつ自己資本の額が4000万円以上であること


    一般建設業の許可を受ける際にも、一定の財産的基礎を有している必要がありますが、特定建設業許可を受けるための財産的基礎の要件は、一般建設業許可の場合よりさらに厳格です。

    なお、欠損の額は、企業の財務状況を示す指標です計算方法は法人と個人事業主で異なるため、注意しましょう

    ① 法人の欠損の額
    法人の欠損の額についての計算方法は、以下のとおりです。
    マイナスの繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+任意積立金)

    ② 個人事業主の欠損の額
    個人事業主については、事業で発生した損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債で計上された利益留保性の引当金および準備金を加えた額を上回る場合の超過分を欠損額とします。つまり、計算方法は以下のとおりです。
    事業主損失-(事業主借勘定-事業主貸勘定+引当金・準備金)
  5. (5)欠格事由に該当しないこと

    欠格事由に該当する場合は、特定建設業の許可を受けることができません(建設業法第17条、第8条)。

    主な欠格事由は、以下のとおりです。

    • 破産手続き開始の決定を受けて復権していない者
    • 一般建設業の許可または特定建設業の許可を取り消され、その取り消しの日から5年を経過しない者
    • 営業の停止または禁止を命ぜられ、その期間が終わっていない者
    • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わってから5年を経過しない者
    • 建設業法違反などの一定の犯罪によって罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わってから5年を経過しない者
    • 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
    • 精神の機能の障害により、建設業を適正に営むにあたって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者
    • 暴力団員などがその事業活動を支配する
    など


    また、許可申請書や添付書類において、重要な事項の虚偽記載があるときや、重要な事実の記載が欠けているときも、特定建設業の許可を受けることができません

    なお、一般建設業についても、上記が許可取得の基準となります。

3、特定建設業者に義務付けられていること

特定建設業者は、許可を取得してからも、建設業法に基づいてさまざまな義務を負います。

① 下請代金の適正な支払い(建設業法第24条の6)
発注者から請負代金の支払いを受けた後、1か月以内かつ出来る限り短い期間内に、下請け業者に対して下請代金を支払わなければなりません。ただし、建設工事の完成を確認した後、下請け業者から引き渡しの申し出を受けた場合、申し出の日から起算して50日以内に下請代金を支払う必要があります。

② 下請け事業者に対する指導等(同法第24条の7)
建設工事の施工について、下請け事業者が法令に違反しないように指導し、違反を認めた場合は指摘して是正を求めるよう努めなければなりません。
下請け事業者が違反を是正しない場合は、速やかに国土交通省または都道府県知事へ通報することが義務付けられています。

③ 施工体制台帳と施工体系図の作成(建設業法第24条の8)
発注者から直接請け負った建設工事につき、下請け代金が5000万円(建築一式は8000万円以上)のときは、施工体制台帳を作成して工事現場ごとに備え置かなければなりません。
発注者から請求があったときは、施工体制台帳を閲覧させる必要があります。

④ 監理技術者等の配置(建設業法第26条)
建設工事の施工にあたっては、工事現場における施工の技術上の管理を行う主任技術者を置かなければなりません。
さらに特定建設業は、当該工事の施工のために締結した下請契約の請負代金の額が、政令で定める金額以上になる場合に、監理技術者を置かなければなりません。


上記以外にも、何か変更があった場合は変更を届け出る、現場ごとに工事の内容について標識を設ける、など一般建設業許可でも特定建設業者でも建設業であれば生じる義務もありますので注意しましょう。

4、特定建設業許可を取得せずに工事を進めてしまったら?

許可を受けずに特定建設業を行うと、営業停止処分や一般建設業の許可取り消し処分などの行政処分を受けるおそれがあります。

また、無許可で建設業を営む行為は犯罪です。
違反すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます(建設業法第47条第1項第1号)。
さらに、違反行為を行った個人だけでなく、法人に対しても両罰規定によって1億円以下の罰金が科されます(同法第53条第1号)。

行政処分対象となった場合、まず国土交通省または都道府県の担当者による立ち入り検査が行われます。立ち入り検査が入った場合、関連する資料をすぐに提示できるように準備しておきましょう。
また、質問に対しては、うそをつかずに誠実に回答することが大切です。聞かれた質問やそれに対する回答は、メモなどに残しておきましょう。

立ち入り検査において違反を指摘されたら、速やかに是正を行い、指定された期限までに改善報告書を提出しましょう。

行政処分の内容に納得できない場合は、審査請求などによって不服を申し立てることができます。申し立てでは、法的根拠に基づいて行政処分の不当性を指摘する必要があるため、弁護士に相談することをおすすめします。

5、建設業許可未取得などで指摘を受けたら弁護士に相談を

建設業者が立ち入り検査の連絡を受けた場合や、行政処分を受けてしまった場合には、速やかに弁護士へ相談しましょう。

弁護士が立ち入り検査に同席すれば、検査担当者の指摘に対して適切な説明をすることができます
また、違反があった場合も、弁護士であれば、指摘された違反事実を踏まえたうえで、法令遵守を今後徹底するための体制整備についてアドバイスが可能です。事業の実態に合った改善案を検討することができるでしょう。

将来的に特定建設業の許可を取得しようとしている事業者も、弁護士への相談がおすすめです。
建設業許可申請にあたって、満たすべき要件を満たしているかどうかの確認や、これから満たすために必要な対応などについてサポートすることができます。

立ち入り検査や行政処分・行政指導への対応にお悩みの建設業の方や、特定建設業の許可を取得しようと考えている方は、弁護士にご相談ください。

6、まとめ

特定建設業とは、発注者から直接工事を受注したうえで、その工事について1件あたりの下請け代金が5000万円以上(建築工事業の場合は8000万円以上)の下請け契約を締結する建設業です。

特定建設業を行うためには、一般建設業とは異なる許可を取得する必要があります。特定建設業の許可要件は、一般建設業よりも厳格です。
また、特定建設業者に適用される特別なルールもあります。万が一、特定建設業許可が必要な工事を特定建設業許可なしで行うなどして、立ち入り検査となった場合は、速やかに是正を行ってください。

建設業法に沿って適切に特定建設業を営むためには、弁護士のアドバイスを受けましょう。お困りの際は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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