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    2025年06月04日
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    請負会社のための都市計画法ガイド|罰則とトラブル防止策
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    請負会社のための都市計画法ガイド|罰則とトラブル防止策

    都市計画法とは、都市の健全な発展のためにまちづくりのルールを定めた法律です。具体的なルールは、地方公共団体が地域の実情に応じて指定していきますので、地域によって規制内容はさまざまです。

    そのため、請負会社は、施工予定の地域の都市計画をしっかりと理解して施工を行わなければ、発注者との間でトラブルが生じるリスクがあります。また、都市計画法に違反すると営業停止や罰金などのペナルティーも課されますので、しっかりと対応していかなければなりません。

    今回は、都市計画法に基づく基本的なルールと違反した場合の罰則、トラブル防止策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、都市計画法とは

都市計画法とはどのような法律なのでしょうか。以下では、都市計画法の概要と都市計画法の目的・理念について説明します。

  1. (1)都市計画法とは

    都市計画法とは、都市の健全な発展のためにまちづくりのルールを定めた法律です。
    都市計画法による都市計画で定められた用途地域によって、建蔽率や容積率などの規制が異なりますので、請負会社としては、都市計画法への理解が非常に重要となります。

    都市計画法に違反するとさまざまなペナルティーが課されますので、建築トラブルを防止するためにもしっかりと対策していくことが大切です。

  2. (2)都市計画法の目的・理念

    都市計画法は、都市計画に関して必要な事項を定めることで都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、それによって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的としています。

    すなわち、まちづくりの基本的なルールを定めることで無秩序な開発がされないようにさまざまなルールを定めた法律になります。

    たとえば、閑静な住宅街にパチンコ店や風俗店が建設されたり、低層住宅が集まる地域に高層ビルやマンションなどが建設されることがないように規制しています。

2、都市計画法の区域区分・地域地区

都市計画法では、区域区分・地域地区に応じて、さまざまな規制が設けられていますので、区域区分・地域地区の分類を理解しておくことが大切です。以下では、区域区分・地域地区の分類について説明します。

  1. (1)都市計画法の区域区分

    都市計画法では、都市計画区域、準都市計画区域、都市計画区域外の3つのエリアに分けて都市計画を定めます。そして、都市計画区域については、さらに市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域の3つの区域区分に分けられます。


    都市計画区域外

    ① 都市計画区域
    都市計画区域とは、ひとつの都市として総合的な開発・整備・保全が必要とされる地域のことを指します。その区域は、都市計画法に基づいて都道府県が指定します。

    都市計画を定めるにあたっては、まずは都市の範囲を明らかにする必要があります。
    そこで、都心の市街地から郊外の田園地域まで、地形、人や物の動き、都市の発展の見通しなどから一体の都市としてとらえる必要がある区域が都市計画区域として指定されます。

    • 市街化区域:市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域をいいます。
    • 市街化調整区域:市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき地域をいい、市街化調整区域内での開発行為は禁止されています。
    • 非線引き区域:非線引き区域とは、都市計画区域内について市街化区域または市街化調整区域の区域区分がなされていない区域をいいます。


    ② 都市計画区域外
    都市計画区域外とは、都道府県により都市計画区域として指定された地域以外の地域をいいます。たとえば、無人島や山奥など人が住むのに適していない地域がこれにあたります。

    都市計画区域外においては、原則として都市計画法は適用されません。

    ③ 準都市計画区域
    準都市計画地域と、都市計画区域外のうちそのまま放置していると将来的に開発・整備・保全に支障が生じるおそれがあるものとして、都道府県が指定した地域をいいます。
    大規模な開発、建設により、無秩序な土地利用や良好な景観の喪失を防ぐために、準都市計画区域が指定されます。

  2. (2)用途地域の区分【一覧】

    都市計画区域および準都市計画区域であっても、土地の使い方や建物の建て方にはさまざまなルールがあります。都市計画法では、都市を大きく住宅地・商業地・工業地の3つに区分し、13種類の用途地域を定めています

    用途地域ごとの具体的な制限内容をまとめると、以下のようになります。


    種別 用途地域 制限内容
    住居系 第1種低層住居専用地域 低層住宅のための地域。小中学校、小規模な店舗、事務所を兼ねた住宅が建てられる
    第2種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡までの一定の店舗が建てられる
    第1種中高層住居専用地域 中高層住宅のための地域。大学、病院、500㎡までの一定の店舗が建てられる
    第2種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域。大学、病院などの他、1500㎡までの一定の店舗や事務所などが建てられる
    第1種住居地域 住居の環境を守るための地域。3000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどが建てられる
    第2種住居地域 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、カラオケボックス、ホテルなどが建てられる
    準住居地域 道路の沿道で、自動車関連施設などの立地と調和した住環境を保護するための地域
    田園住居地域 農業の利便性の向上とこれに調和した低層住宅の良好な住環境を保護するための地域。当該地域で生産された農産物を使用する場合、500㎡までの店舗が建てられる
    商業系 近隣商業地域 近隣住民が日用品の買い物などをする地域。住居や店舗の他に、小規模の工場も建てられる
    商業地域 飲食店、百貨店、銀行、映画館などが集まる地域。住宅や小規模の工場も建てられる
    工業系 準工業地域 主に軽工業の工場、サービス施設などが立地する地域。危険性、環境悪化が大きい工場を除きほとんどが建てられる
    工業地域 どんな工場でも建てられる地域。住宅や店舗も建てられるものの、学校、ホテル、病院は建てられない
    工業専用地域 工場のための地域。どんな工場でも建てることができるものの、住宅、店舗、学校、ホテル、病院などは建てられない

3、都市計画法違反とペナルティー(罰則)

都市計画法に違反すると以下のようなペナルティーが課されます。

  1. (1)都市計画法違反の罰則

    ① 用途地域の指定違反
    都市計画法では、建築される建物の規模や用途を制限するために、用途地域の指定をしています。
    たとえば、第1種低層住居専用地域に大型店舗を建設した場合、用途地域の指定違反となりますので、請負会社には100万円以下の罰金が科されます(建築基準法第101条第1項第5号、第48条第1項)。

    ② 開発許可違反
    開発行為とは、以下を目的とした土地の区画形質の変更をいいます(都市計画法第4条第12項、「特定工作物」について同条第11項)。

    • 建築物の建築
    • 第1種特定工作物の建設
    • 第2種特定工作物の建設

    都市計画法では、このような開発行為を行う場合には、都道府県知事または市町村長の許可を得なければならないとされています。
    たとえば、市街化調整区域内において農地を宅地に変更する場合には、開発許可が必要になりますが、そのような許可を得ずに開発行為を行うと、開発許可違反となりますので、50万円以下の罰金が科されます(都市計画法第92条第3号、第29条1項)。

    ③ 施設の無許可変更
    市街化調整区域のうち開発許可を受けた土地以外の土地では、都道府県知事または市町村長の許可がなければ一定の建築行為をすることができません
    許可権者から建築許可を受けたものの、無許可で内容を変更して建築行為をすることは、施設の無許可変更にあたりますので、50万円以下の罰金が科されます(都市計画法第92条第6号、第42条1項)。

    ④ 虚偽申請や報告義務違反
    地区計画区域内において、土地の区画形成変更や建築物の建築などを行う場合には、着工日の30日前までに、以下の事項を市町村長に届け出なければなりません。

    • 行為の種類
    • 場所
    • 設計
    • 施行方法
    • 着手予定日
    • その他国土交通省令で定める行為

    このような届け出を怠った場合または虚偽の届け出をした場合には、都市計画法違反となりますので、20万円以下の罰金が科されます(都市計画法第93条第1号、第58条の2第1項)

  2. (2)都市計画法違反の監督処分

    都市計画法に違反した請負会社には、上記のような罰則の他に、国土交通大臣、都道府県知事または市町村長による監督処分を受ける可能性があります。
    具体的な監督処分の内容としては、以下のとおりです。

    • ① 許可、認可、承認の取り消し、変更、その効力の停止、その条件の変更、新たな条件を付す
    • ② 工事その他の行為の停止の命令
    • ③ 建築物その他の工作物または物件の改築、移転、除却の命令
    • ④ その他違反を是正するため必要な措置をとることの命令

    このような監督処分に違反した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(都市計画法第91条、第81条第1項)

4、建築トラブル防止のために│弁護士に相談するメリット

建築トラブル防止のためには、早期に弁護士に相談するのがおすすめです。以下では、請負会社が弁護士に相談するメリットを説明します。

  1. (1)違反リスクを未然に防げる

    土地開発や建物の建築には、多額の資金を要することになりますので、都市計画法などの法令違反が判明すると、工事のやり直しや建築物の取り壊しなどで莫大な損害が生じるリスクがあります。
    そのような違反リスクを防ぐには、法律の専門家によるアドバイスやサポートが不可欠です。顧問弁護士を利用すれば、日常的に弁護士に相談することができますので、法令違反が顕在化する前に対策を講じることができます。

  2. (2)許認可手続きのサポートを受けられる

    都市計画法では、開発行為を行う際には都道府県知事または市町村長の許可が必要になります。また、建築物を建てる際には、建築基準法による許可も必要になるなど、請負会社は、さまざまな許認可の手続きを行わなければなりません。
    必要な許認可の手続きを怠ったり、誤った申請をしてしまうと法令違反による監督処分の対象になりますので、適切な対応していくことが大切です。このような複雑な許認可の手続きも弁護士に相談すれば、適切なサポートを受けることができます。

  3. (3)最新法令や判例の情報を知れる

    建築関連法令は、時代の変化に応じて改正が行われますので、請負会社としては法改正の内容を踏まえた最新の法令を理解していなければなりません。また、建築トラブルが生じた場合、解決の指針となるのは過去の判例ですので、判例の理解も欠かせません。
    顧問弁護士がいれば、自社に関係する法令について改正があったときは、改正内容の要点をわかりやすくまとめて説明してもらうこともできますので、複雑な法令を一から理解する負担はありません。また、建築トラブルに詳しい弁護士であれば判例も熟知していますので、適切な内容でトラブルを解決することができます。

5、まとめ

都市計画法は、都市の健全な発展のためにまちづくりのルールを定めた法律です。土地の開発行為や建築に携わる請負業者にとっては、特に関係性の深い法律といえますので、都市計画法の正確な理解が求められます。

このような都市計画法に関する疑問やトラブルを解決するには、弁護士による法的アドバイスが有効です。ベリーベスト法律事務所では、建築紛争に強い弁護士による専門チームがあるほか、一級建築士も所属していますので、専門的なアドアイスが可能です。

建築トラブルでお困りの方は、全国に拠点を有し、解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
建築・建設に関するトラブルや訴訟問題でお困りの際は、お電話やメールにてお問い合わせください。

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