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    2025年05月07日
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    フリーランス新法│建設業への影響大? 発注時の注意点やペナルティー
    監修者:萩原達也 代表弁護士(東京第一弁護士会所属)
    フリーランス新法│建設業への影響大? 発注時の注意点やペナルティー

    令和6年11月から、いわゆる「フリーランス新法」(フリーランス保護法、フリーランス保護新法などと呼ばれることもあります)が施行されました。

    フリーランス新法は、建設業者に対しても適用されます。特に一人親方などと業務委託契約を締結する場合は、フリーランス新法の規制を順守しましょう。

    本記事では、フリーランス新法について建設業者が注意すべきポイントなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、建設業にも関係する「フリーランス新法」とは

「フリーランス新法」とは、企業との取引において、フリーランス(個人事業主)や一人会社を保護するための法律です。
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。

  1. (1)フリーランス新法の目的

    フリーランス新法の目的は、契約上の立場が不安定であり、報酬の不払いや低報酬に悩まされがちなフリーランス事業者の状況を改善することです。

    また、企業に雇用されている労働者に比べて、フリーランスは契約を切られやすい傾向にあります。契約の打ち切りを恐れて、低すぎる報酬で業務を請け負うフリーランスがたくさんいるのが実情です。

    そこでフリーランス新法では、発注事業者に対し、取引条件の明示義務や期日における報酬の支払い義務、育児介護等と業務の両立に対する配慮義務など、様々な規定を設け、フリーランスの保護を図っています。

  2. (2)フリーランス新法の適用範囲

    フリーランス新法が適用されるのは、(特定)業務委託事業者から特定受託事業者に対して業務委託をする場合です。

    特定業務委託事業者」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます(法第2条第6項)

    • ① 個人であって、従業員を使用するもの
    • ② 法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの


    また、「特定受託事業者」とは、業務の相手方である事業者であって、以下のいずれかに該当するものをいいます(法第2条第1項)。

    • ① 個人であって、従業員を使用しないもの
    • ② 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの


    誤解を恐れずかみ砕いて言うと、従業員を使用しているような事業者から、従業員を使用していないようなフリーランスである個人などに対して業務委託をする場合全般に幅広く適用され得るということになります。
    このように、フリーランス新法の適用範囲はかなり幅広くなっていますから、建設業者においても、一人親方と契約する場合などには、フリーランス新法の規制に注意しなければなりません

  3. (3)フリーランス新法と下請法の違い

    フリーランス新法と同様に、立場の弱い受注者側を保護する法律として「下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)」があります

    下請法が適用されるかどうかは、取引当事者の資本金の額や、委託する業務の内容によって決まります。
    これに対しフリーランス新法は、資本金の額や、委託する業務の内容にかかわらず、(特定)業務委託事業者と特定受託事業者(フリーランスなど)の間の取引について幅広く適用されます。

    またフリーランス新法では、発注者側に対する規制について、妊娠等への配慮やハラスメント防止など、下請法にはない時代に沿った内容も盛り込まれています。

2、フリーランス新法について発注者が注意すべきポイント

フリーランス新法に関して、建設業の発注者においては、特に以下のポイントを正しく理解しておきましょう。

  1. (1)取引に関する事項を明示する

    特定受託事業者に対して業務委託をする事業者(=業務委託事業者)は、原則として委託を行った後、直ちに取引に関する事項(業務委託日、内容、期間、場所、報酬額、報酬の支払日、報酬の支払い方法など)を明示しなければなりません(法第3条第1項)。
    取引事項の明示は、書面または電磁的方法(メールや書類データなど)で行う必要があります

    特定受託事業者に対して明示すべき事項の詳細は、「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」第1条に定められています。

    この義務は、特定業務委託事業者に関わらず、特定受託事業者に対し業務委託をする事業者全般に適用されることに注意が必要です。

  2. (2)報酬の支払期日を一定期間内において定める

    特定業務委託事業者は、前述の報酬の支払日を定めるにあたっては、仕事の成果を受け取った日や仕事が終わった日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間を報酬の支払期日として定めなければなりません(法第4条第1項)

    ただし、他の事業者から委託された業務を、特定受託事業者に対して再委託するときは、元委託業務の対価の支払われる予定日から30日以内で、かつできる限り短い期間で報酬の支払期日を定める必要があります(同条第3項)。

  3. (3)禁止行為をしない

    特定業務委託事業者は、業務委託をする特定受託事業者に対して、以下の行為をしてはなりません(法第5条)。

    ① 特定受託事業者のせいではないのに、以下の行為をすること
    ・納品物の受け取り拒否
    ・報酬の減額
    ・受け取った納品物の返品

    ② 通常支払われる対価に比べて、著しく低い報酬の額を不当に定めること

    ③ 正当な理由がないのに、特定受託事業者に対して以下の行為を強制すること
    ・自己の指定する物を購入させる
    ・自己の指定する役務を利用させる

    ④ 以下の行為を通して、特定受託事業者の利益を不当に害すること
    ・自分のために金銭、役務その他の経済的な利益を提供させる
    ・特定受託事業者のせいではない理由で、給付内容の変更または給付のやり直しをさせる


    なお、上記の⑴~⑶に違反する事実があった場合、特定受託事業者は、公正取引委員会や中小企業庁の長官に対し、適切な措置(調査や、改善措置)をとることを求めることができます。

  4. (4)募集事項を的確に表示する

    特定業務委託事業者は、特定受託事業者を募集する広告等を行うに当たって、以下の情報を提供するときは、当該情報について虚偽または誤解を生じさせる表示をしてはいけません(法第12条第1項、施行令第2条)。

    • 業務の内容
    • 仕事をする場所、期間または時間について
    • 報酬に関する事項
    • 契約の解除(契約期間が終わった後に更新しない場合を含む)に関係する事項
    • 特定受託事業者の募集を行う者についての事項


    また、広告等における上記の情報は、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(法第12条第2項)。

  5. (5)妊娠・出産・育児・介護に対して配慮する

    業務委託の契約期間が6か月以上(契約更新によって継続して6か月以上になる場合も含む)である場合、特定業務委託事業者は、特定受託事業者の申し出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と両立しつつ業務に従事できるように、状況に応じた必要な配慮をすることが義務付けられています(法第13条第1項、施行令第3条)。

    また、契約期間が6か月未満の場合でも、特定受託事業者からの申し出に応じて同様の配慮をする努力義務が課されています(同条第2項)。

  6. (6)ハラスメント防止措置を講じる

    特定業務委託事業者は、個人である特定受託事業者、または法人である特定受託事業者の代表者がハラスメントの被害に遭わないように、必要な措置を講じることが義務付けられています(法第14条第1項、第15条、厚生労働省の定める指針第4)。

    防止措置の対象となるハラスメントの種類は、以下のとおりです。

    • セクシュアルハラスメント(セクハラ)
    • 妊娠、出産等に関するハラスメント(マタハラ)
    • パワーハラスメント(パワハラ)


    また、特定業務委託事業者は、特定受託事業者が上記のハラスメントについて相談をしてきたことなどを理由に、業務委託契約の解除その他の不利益な取り扱いをしてはいけません(同条第2項)。

3、フリーランス新法に違反したときのペナルティー

フリーランス新法に違反した事業者は、公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣から指導や助言を受けることがあります(法第22条)

また、特定業務委託事業者に対する一部の規制への違反については、厚生労働大臣による勧告の対象となります(法第18条)。
勧告に従わない特定業務委託事業者に対しては、厚生労働大臣によって必要な措置をとるよう命令がなされ、その旨が公表される可能性があるので要注意です(法第9条、第19条)

さらに、以下のいずれかに該当する行為をした場合は、行為者および法人に対してそれぞれ「50万円以下の罰金」が科されます(法第24条、第25条)。

  • 公正取引委員会や厚生労働大臣からの命令に違反したとき
  • 中小企業庁長官、公正取引委員会、厚生労働大臣から求められた報告をせず、または虚偽の報告をしたとき
  • 中小企業庁長官、公正取引委員会、厚生労働大臣の検査を拒み、妨げ、または忌避したとき

4、建設業者が一人親方を雇う場合の注意点

建設業における一人親方は、特定受託事業者に該当し、フリーランス新法によって保護されます。これまで解説した、発注者側に対する規制の内容を正しく理解した上で、一人親方と契約する際には規制の順守に努めましょう。

また、一人親方の働き方に関しては、いわゆる「偽装一人親方」にならないように注意が必要です。

偽装一人親方」とは、形式上は対等な立場で業務委託契約を締結しているのに、実質的には労働者のような働き方をしている一人親方のことです。
偽装一人親方に該当する場合はフリーランス新法の代わりに労働法の規制が適用され、残業代が発生する、労働時間が制限される、解雇が難しくなるなどの事態が生じてしまいます。

偽装一人親方に当たるかどうかは、一人親方が発注者の具体的な指揮命令下にあるか、勤務場所や勤務時間が指定され管理されているか、報酬が時間給ベースで計算されているかなどによって総合的に判断されます。
工事業務の進め方について発注者が具体的な指揮監督をしている場合や、一人親方側に業務を拒否する自由がない場合などには、偽装一人親方と判断されるリスクが高いのでご注意ください。

もし偽装一人親方を疑われるような実態が存在するなら、早急に是正を図りましょう。

5、まとめ

令和6年11月から施行されたフリーランス新法は、一人親方などに業務を委託している建設業者にも適用されます。フリーランス新法の規制を順守し、一人親方などとのトラブルを防ぐためには、弁護士のアドバイスを受けましょう。

ベリーベスト法律事務所は、建設業者からのご相談を随時受け付けております。初回相談は60分無料で、一級建築士も所属しており、建設工事に関する法律トラブルの解決実績を有しております。

フリーランス新法への対応についてどう対処するべきかお困りの建設業者は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

監修者情報
萩原達也 代表弁護士
萩原達也 代表弁護士
弁護士会:第一東京弁護士会
登録番号:29985
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
建築問題の解決実績を積んだ弁護士により建築訴訟問題専門チームを組成し、一級建築士と連携して迅速な問題解決に取り組みます。
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