建設工事に携わる場合、一般的な建設工事の下請負(建設工事の再委託)には建設業法が適用されますが、資材の製造を委託する場合には製造委託として、設計や図面の作成を委託する場合には情報成果物作成委託として、下請法が適用されることになります。
建設業者は両者の違いを正しく理解しておきましょう。
本記事では、建設業法と下請法の違いについて、建設業法を中心に、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
建設業法は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することという目的のために、建設業者に対する規制を定めた法律です。
そして、下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者と下請け事業者の取引を公正化するため、親事業者に対する規制を定めた法律です。
建設業法は、主に建設工事の請負契約および建設業者を対象としています。
これに対して下請法は、資本規模で勝る事業者を発注者、資本規模で劣る事業者を受注者とする取引に幅広く適用されます。
規制の内容にも、建設業法と下請法の目的やターゲットの違いが表れています。
建設業法は建設業に特有の事項を定めているのに対して、下請法では親事業者による下請け事業者の搾取を防ぐための一般的な規制が定められています。
なお、建設工事関係で下請法が適用されるのは、資材の製造を委託したとき(製造委託)と、設計や図面を委託したとき(情報成果物作成委託)に限られます。
次の項目から、建設業法を詳しく解説しますので、ご参照ください。
建設業を営むためには、許可が必要です。
そして、建設業法が適用される取引は、建設工事の請負契約です。
建設業法は、建設工事の請負契約に対して適用されます。
「建設工事」とは、土木建築に関する工事であって、以下のものをいいます(建設業法第2条第1項、別表第1)。
施主が上記いずれかの建設工事を発注し、施工業者がその完成を請け負う取引が、建設業法の適用対象です。
建設工事の完成を請け負う営業(=建設業)を行おうとする者は、原則として上記1~29の種類ごとに、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければなりません(建設業法第3条)。
また、建設業は「特定建設業」と「一般建設業」の2種類に分かれています。
特定建設業は、4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)の下請け契約を締結して建設工事を施工する建設業です。
一般建設業は、特定建設業に該当しない建設業です。
特定建設業の許可を受けた事業者(特定建設業者)は、一般建設業と特定建設業の両方を行うことができます。これに対して、一般建設業の許可を受けた事業者(一般建設業者)は、一般建設業のみを行うことができます(同法第16条)。
建設工事の請負契約に関して、当事者は主に以下の事項を順守する必要があります。順守しない場合は、行政からのペナルティーを受ける恐れがありますので、注意が必要です。
建設業者が建設業法に違反した場合は、国土交通大臣または都道府県知事から是正指示を受けることがあります(建設業法第28条第1項・第2項・第4項)。
指示に従わないと、1年以内の営業停止処分を受けるおそれがあります(同条第3項・第5項)。
さらに、かなり建設業法から逸脱している場合や、営業停止処分に反して営業を続けた場合は、建設業の許可を取り消されるおそれがあるので注意が必要です(同法第29条第1項第8号)。
また、無許可での建設業や営業停止処分違反、検査の拒否・妨害・忌避などの違反行為は刑事罰の対象とされています(同法第47条、第52条、第53条)。
建設業者が建設業法や下請法を正しく順守するためには、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、建設業に関連する最新の法令にのっとったアドバイスを受けられます。
また、施主との建築訴訟その他のトラブル対応や、人事労務・契約書のチェックなどについても幅広くサポートを受けられます。
弁護士と顧問契約を締結すれば、建設業の運営に関していつでも相談することが可能です。コンプライアンスを強化したい建設業者は、顧問弁護士との契約をご検討ください。
建設業法は一般的な建設工事に対して適用される、建設業者にとって、最も身近な法令です。また、適用される場面は限られていますが、下請法も、建設業者が行う委託に対して適用される場合があります。建設業者は、弁護士のアドバイスを受けながら、建設業法と下請法の順守に努めましょう。
ベリーベスト法律事務所は、建設業者からの法律に関するご相談を随時受け付けております。建設業法や下請法について分からないことがある建設業者は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。