【ニュース解説】ニチアス工場アスベスト飛散による中皮腫死亡例|国が賠償責任を認定
- アスベスト健康被害
【ニュース】ニチアス羽島工場のアスベスト飛散により中皮腫を発症し死亡した事案で、公害等調整委員会が企業の賠償責任を認定しました。
アスベスト健康被害は労働者だけでなく周辺住民にも及ぶことがあり、注意が必要です。
ニュース概要
建材メーカー「ニチアス」の羽島工場(岐阜県羽島市)から飛散したアスベスト(石綿)を原因とする健康被害について、国の公害等調整委員会は2025年9月、同社に対し損害賠償の責任を認める裁定を行いました。
この事案では、工場周辺地域にある別の事業所で勤務していた男性が、ニチアスの工場から飛散したアスベストを吸い込んだことで中皮腫を発症し、最終的に死亡したとされています。
遺族はニチアスに対して損害賠償を求めており、公調委は遺族の主張を認め、企業に賠償義務を課す判断を下しました。
裁定にあたって、公調委は、アスベストの飛散源はニチアスの工場のほかになく、ニチアスが実質的な責任を負うべきであり、周辺住民の健康被害を招いた点を認定したと報じられています。
アスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説
アスベストは、極めて微細な繊維状物質として空気中に浮遊し、吸入によって肺や胸膜などに沈着し、時間をかけて健康被害を引き起こすリスクがあります。当初はこの危険性が分からず、耐久性・耐熱性等にすぐれ何よりも安価であったため、広く使用されていました。
その結果、工場労働者の被害や近隣住民の被害が問題となり、裁判所により、労働者に対する使用者と国の責任が認められました。
ただ、工場等からの飛散による「環境ばく露」も無視できないにもかかわらず、近隣住民に対する賠償は不十分でした。
現時点における被害者救済の制度として、労働者には労災保険や国の給付金制度が整備されています。さらに、近隣住民が被害を受けた場合でも、「石綿健康被害救済給付制度」により、指定疾病(中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺など)が認定されれば、医療費や療養手当、特別遺族弔意金、葬祭料などの給付を受けることが可能となりました。
今回の裁定は、裁判所の判決ではないものの、工場等の近隣住民の被害救済の観点からみれば、価値ある判断であり、場合によっては国や企業を相手に損害賠償を請求できる可能性を高くするものでしょう。
ただ、アスベスト被害の賠償請求には時効の制限があるため、早めに対応を検討することが重要です。
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