【ニュース解説】札幌地裁、建材メーカー3社に責任認定|建設アスベスト第4陣訴訟
- アスベスト健康被害
【ニュース】2025年9月18日、札幌地裁は建設アスベスト第4陣訴訟で建材メーカー3社の責任を認定し、16名への賠償を命じました。
賠償額は全国水準を上回りつつ、責任制限も盛り込まれた判決として注目されています。
ニュース概要
2025年9月18日、札幌地方裁判所は北海道建設アスベスト第4陣訴訟において、原告17名のうち16名を救済する判決を下しました。被告となった建材メーカー3社(エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス)に対し、責任を認めて賠償を命じています。
判決は、最高裁が示してきた共同不法行為責任の枠組みを踏まえつつも、全国水準を上回る賠償額を示すなど、被災者救済を強く意識した内容となっています。
一方で、原告1名についてはメーカーからの建材到達が認められないとして請求を棄却しました。また、有責期間外の石綿暴露や屋外・解体作業による暴露については、責任を制限する形で減額を認める判断もなされました。
今回の判決は、北海道で続くアスベスト訴訟の第3陣判決に続くもので、建材メーカーの責任をあらためて明確化する意義を持ちます。
同種訴訟は各地で進行しており、今回の判断は被害者救済の方向性を示す重要な前例となると注目されています。
アスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説
建材メーカーに対する請求は、建築資材に石綿(アスベスト)が含まれていている場合に、建材メーカーとして石綿が人体に対し危害を及ぼすことを予見でき、それ故事前にこの危険性を警告するべき義務があったにもかかわらずその義務に違反して、建築資材を加工した者等に石綿関連疾患を発生させたことを理由とするものです。
令和3年5月に最高裁判所が建材メーカーの損害賠償責任を認め損害賠償金を命ずる判決を出しましたが、本件で札幌地方裁判所は3社の建材メーカーに対する損害賠償を認めました。
もっとも、本件で建材メーカーの製造販売した建材のシェア率によって建材メーカーの責任が否定されていることから、今後も、訴えを提起された建材メーカーとしては、自社建材のシェア率が低いことを主張し責任の有無と程度について徹底的に争うことが予想されます。
損害賠償請求をする被災者側は、今後も相手方会社の製造販売した建材のシェア率について厳格な立証が求められることとなります。
また、本判決は前述の最高裁判所の判断を踏襲し、屋外作業又は解体作業の職歴を有する被災者について、建材メーカーらの責任を否定し、またその職歴に対応した減額を行っています。
同最高裁判決によれば、屋外作業上においては屋内作業場と異なり風等により自然に換気がされ、石綿粉塵濃度が薄められることがうかがわれるため、建材メーカーにおいて自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する人たちに石綿関連疾患に罹患する危険が生じていたことを認識することができなかったといえることから、屋外作業に従事した労働者に対する建材メーカーの責任は否定されるとされました。
そして裁判所は、作業場所が屋根や壁に囲まれているとは言い難い解体作業現場の被災者についても、同様の理由から責任を否定又は制限すべきであるとの立場を採っていると考えられます。
今回の札幌地方裁判所の判決においても、この考え方が踏襲され、屋外作業又は解体作業の職歴を有する労働者の救済範囲が狭いことがより明らかとなったといえます。したがって、屋外作業の職歴を有する被災者の方等については、国及び建材メーカーからの救済はない若しくは制限されたままであり、これらの方々が十分な救済を得るためには、使用者に対して損害賠償請求をするしかないのが現状です。
当事務所においても建材メーカーや使用者に対するアスベスト被害についての請求に関してお手伝いさせていただいており、過去の最高裁判例や本判決のような最新の裁判例を分析・調査した上でサポートさせていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。
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