【ニュース解説】判決確定|アスベストじん肺訴訟で遺族勝訴 除斥期間の起算点見直し
- アスベスト健康被害
【ニュース】アスベスト工場でじん肺を発症した男性の遺族が国に賠償請求した裁判で大阪高裁が起算点を行政認定日に見直し勝訴。
厚労省は運用を変更し、じん肺管理区分決定日を新たな起算点としました。
ニュース概要
アスベスト(石綿)工場で働き、じん肺(石綿肺)を発症した男性の遺族が国に約600万円の損害賠償を求めた裁判で、大阪高裁は令和7年4月17日、賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)の起算点を「最終の行政上の決定を受けた時」と判断し、遺族側が勝訴しました。国は5月1日の上告期限までに上告せず、判決は確定しています。
もともと国は、平成26年(2014年)の最高裁判決を受けて、一定の要件を満たす元労働者に賠償金を支払う救済策を導入していました。
しかし、令和元年9月27日福岡高裁判決でアスベスト由来の肺がんに関する遅延損害金の起算点が「肺がんの確定診断を受けた日」と判断されたことをきっかけに運用を変更し、石綿肺を含む石綿関連疾患の除斥期間の起算点を医師の診断日に前倒しする運用を行っていました。
その結果、救済対象から外れるケースが生じていたなかで、今回の判決ではじん肺の進行性や特殊性が考慮され、行政認定日が適切とされました。
厚生労働省は判決確定を受け、従来医師の診断日としていた起算点を、じん肺に限り、行政がじん肺の症状の重さなどを区分するじん肺管理区分を決定した日とする運用に変更しました。なお、他の石綿関連疾患は対象外としています。
アスベスト専門チーム所属弁護士が、ニュースのポイントを解説
今回の大阪高裁判決は、大阪アスベスト弁護団の尽力によって実現したもので、じん肺で亡くなられた方の遺族救済に大きな前進となりました。
国はこれまで、アスベストによる病気について「確定診断日」から20年が経過すると賠償請求ができないという運用をしてきました。
しかし、じん肺は時間の経過とともに症状が悪化する進行性の病気であり、診断を受けた直後に裁判や申請を進めることが難しい場合が少なくありません。
今回の判決はその点を考慮し、病気の重さを国が正式に判断する「行政認定日」から20年を数えるべきだと示しました。この判断により、従来救済の対象外とされていた方も救済を受けられる可能性が広がります。
もっとも、肺がんや中皮腫など他のアスベスト関連疾患については、発症日から20年以内であることが救済の条件とされており、今後の制度改善や裁判例の積み重ねが注目されます。
ベリーベスト事務所では、アスベスト給付金の申請や損害賠償請求、訴訟対応など幅広いサポートを行っています。
今回の判決によって新たに救済の対象となり得るケースもありますので、まだ申請をされていない方や対象になるか不安な方は、この機会にぜひご相談ください。
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