弁護士コラム

アスベスト被害で企業責任を問うことは可能? 損害賠償請求とそのポイント

2023年09月14日
  • アスベスト
  • 企業責任

アスベスト被害で企業責任を問うことは可能? 損害賠償請求とそのポイント

アスベスト被害については給付金制度が設けられていますが、それとは別に、企業に対しても損害賠償を請求できる可能性があります。企業に対する損害賠償請求を行う際には、弁護士にご相談ください。

今回は、アスベスト被害の企業に対する損害賠償請求について、要件・損害項目・手続きなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、アスベスト被害について、企業は責任を負うのか?

アスベスト被害については、工場型・建設型のそれぞれについて給付金制度が設けられています。

各給付金の支給要件については、以下のページをご参照ください。

〈 参考 〉ベリーベスト法律事務所|賠償金・給付金請求の対象となる要件

また給付金だけでなく、被害者は勤務先の企業や建材メーカーに対して、それぞれ損害賠償を請求できる場合があります。企業に対する損害賠償請求については、弁護士にご相談ください。

  1. (1)給付金とは別に、企業に対する損害賠償請求も可能

    工場型・建設型の各アスベスト給付金は、国のアスベスト被害者に対する責任を果たすために設けられたものです。国はアスベスト被害者に対して、アスベストの使用を適切に規制しなかったことにつき、国家賠償責任を負います。

    しかし、アスベスト被害について責任があるのは、国だけではありません。被害者を雇用していた企業や、アスベストを含有していた建材(アスベスト建材)を製造していたメーカーにも責任の一端があります。

    したがって、使用者であった企業や建材メーカーに対しても、アスベスト被害者は損害賠償を請求できる場合があります。ただし、それぞれ請求できる要件などが異なるため注意が必要です

  2. (2)使用者であった企業が負う損害賠償責任

    使用者は労働者に対して、生命・身体の安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮を行う義務を負います(労働契約法第5条)。これを「安全配慮義務」といいます。

    アスベスト粉じんが飛散する可能性のある工場や工事現場で作業する労働者について、使用者であった企業は、粉じんの飛散防止などの措置を講じて、生命・身体の安全を確保すべき義務を負っていたと考えられます。
    そのため、使用者が適切な措置を怠ったことがアスベスト被害に寄与した場合、被害者は使用者であった企業に対して、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求可能です。


    <使用者として損害賠償責任を負う企業の例>
    • アスベストの製造工場を運営していた企業
    • 建設業や解体業を営む企業(アスベストを使用している建物等の建設や解体を行っていた場合など)
    など
  3. (3)建材メーカーが負う損害賠償責任

    アスベストの危険性は、遅くとも1975年には予見可能であったと考えられます。それ以降、アスベストを含有する建材を製造していたメーカーは、自ら製造販売した建材の危険性や、それを回避する手段について警告しなければなりませんでした。

    具体的には、アスベストを使用した建材について、含有の有無・含有量・危険性等が明確かつ具体的に表示されていなかった場合には、建材メーカーの警告義務違反に当たる可能性があります。
    適切な警告がなされなかったことが、被害者の長期間にわたるアスベスト吸引の一因となった場合には、製造物責任(製造物責任法第3条)に基づく損害賠償請求が認められる余地があります。

    ただし、建材メーカーに対して責任を追及できるのは、「建設型」に該当するケースに限られます。また、たとえば解体工については、警告表示を直接視認することがなく、警告表示をしても結果回避可能性が認められないことを理由に、建材メーカーの損害賠償責任を否定するのが裁判例の傾向です(大阪高裁平成30年8月31日判決等)。


    <建材メーカーとして損害賠償責任を負う企業の例>
    • 断熱材を製造する企業
    • 吸音材を製造する企業
    • 保温材を製造する企業
    • 耐火被覆材を製造する企業
    など
  4. (4)損害賠償請求権の消滅時効に要注意

    使用者や建材メーカーに対する損害賠償請求権は、以下の期間が経過すると時効消滅します。


    使用者に対する損害賠償請求権
    (安全配慮義務違反)
    ① 2020年3月31日以前に労働契約が締結された場合
    →アスベストによる直近の健康被害を発症した時(または死亡の時)から10年

    ② 2020年4月1日以降の日に労働契約が締結された場合
    →以下のいずれか早く経過する期間
    • アスベストによる直近の健康被害を発症した時(または死亡の時)から20年
    • 当該健康被害(または死亡)を知った時から5年
    建材メーカーに対する損害賠償請求権
    (製造物責任)
    ① 2020年3月31日以前の日に建材が引き渡された場合
    →以下のいずれか早く経過する期間
    • 当該健康被害(または死亡)と、責任を負う建材メーカーを知った時から3年
    • アスベスト被害による損害が生じた時から10年

    ② 2020年4月1日以降の日が起算点となる場合
    →以下のいずれか早く経過する期間
    • 当該健康被害(または死亡)と、責任を負う建材メーカーを知った時から5年
    • アスベスト被害による損害が生じた時から10年

    損害賠償請求権の時効消滅を防ぐため、アスベスト被害に少しでも心当たりのある方は、お早めに弁護士までご相談ください。

2、企業に対して請求できる、アスベスト被害の損害賠償項目

使用者であった企業や建材メーカーに対して、被害者は以下の損害などの賠償を請求できます。

  • 医療費
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • 慰謝料(入通院慰謝料、障害慰謝料、死亡慰謝料)
など


ただし実務上は、上記のような各損害を包括して「慰謝料」の名目で請求するケースが多いです。 なお、工場型(国との和解手続き)・建設型(給付金制度)で金銭を受け取っている場合、その金額は損害賠償額から控除されます。

3、企業に対するアスベスト損害賠償請求の手続き

使用者であった企業や建材メーカーに対して、アスベスト被害の損害賠償を請求する手続きは、主に和解交渉と訴訟の2つです。

  1. (1)企業との和解交渉

    最初の段階では、対象企業に直接連絡して、損害賠償に関する和解交渉を提案するのが一般的です。企業が交渉に応じれば、損害賠償の要否・金額・支払方法などについて話し合います。
    示談交渉がまとまれば、早期かつ簡単な手続きで損害賠償を受けられるのが大きなメリットです。

    示談交渉を成功させるには、企業が責任を認めざるを得ないように、有力な証拠を基にして説得力のある主張を展開することが大切です。個人での示談交渉は難航するケースが多いため、弁護士を代理人として立てることをおすすめします。

  2. (2)損害賠償請求訴訟

    示談交渉がまとまらない場合は、裁判所に対して損害賠償請求訴訟を提起します。

    損害賠償請求訴訟では、企業が負うべき損害賠償責任の発生要件を、被害者側(原告)が証拠に基づいて立証しなければなりません。訴訟手続きに関するルールも複雑なため、専門的な検討および対応が求められます。

    そのため、企業を相手に損害賠償請求訴訟を提起する際には、弁護士へのご依頼をおすすめします。

4、アスベスト被害にお悩みの方は弁護士へ相談を

アスベスト被害については、全国各地の工場型アスベスト訴訟や建設アスベスト訴訟を経て、被害者の方が補償を受けられる給付金や損害賠償の仕組みが整っています。長期の潜伏期間を経て発症するのがアスベストによる健康被害の大きな特徴なので、過去に石綿工場や建設現場で働いていた方も、給付金請求や損害賠償請求をご検討ください。

アスベスト被害について適切な補償を受けたい方は、弁護士へのご相談をおすすめします。弁護士に相談することには、以下のメリットがあります。

  • 給付金請求や損害賠償請求の手続きを一任できる
  • 必要な証拠の収集についてもアドバイスを受けられる
  • 訴訟になってもスムーズに対応できる
など

ベリーベスト法律事務所では、アスベスト被害について、企業に対する損害賠償請求をサポートしています。そのほか、アスベスト被害に関する労災申請や給付金の申請についても、経験豊富な弁護士が丁寧にご対応いたします。

アスベストによる健康被害が疑われる方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

アスベストによる健康被害については、国が設けている補償金制度(工場型・建設型)を利用できるほか、使用者であった企業や建材メーカーに対して損害賠償を請求できる可能性があります。

使用者であった企業に対しては、労働者の生命・身体の安全を確保するために必要な配慮を怠ったこと(安全配慮義務違反)を根拠に、損害賠償を請求可能です。
建材メーカーに対しては、アスベスト建材の危険性について警告し、その危険を回避する手段を表示していなかったことを理由に、不法行為に基づく損害賠償を請求できる場合があります。

企業責任の追及も視野に入れつつ、アスベスト被害につき適切な補償を受けるためには、弁護士への相談がおすすめです。

ベリーベスト法律事務所は、アスベスト被害に関するご相談を随時受け付けております。
アスベスト被害者が十分な補償を受けられるように適切な方法を検討した上で、補償金請求や損害賠償請求の対応をサポートいたします。全国各地でアスベスト被害に関する事件を数多く取り扱っており、経験とノウハウが十分に蓄積されている点が、ベリーベスト法律事務所の大きな強みです。

アスベストによる健康被害にお悩みの方は、ご自身やご家族のために適切な補償を受けるべく、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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