弁護士コラム

【アスベスト給付金に関する法改正】建設アスベスト給付金制度とは?

2022年07月05日
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【アスベスト給付金に関する法改正】建設アスベスト給付金制度とは?

現在、アスベストは全面的に使用が禁止されていますが、過去には建設現場などで使用されてきたという歴史があります。

国が規制権限を適切に行使しなかったことが被害を拡大させた要因でしたが、長い間、国の責任は認められませんでした。
そのため、業務中にアスベストを吸い込んだことが原因で健康被害を受けたとしても、必要な救済を受けることができないまま泣き寝入りしている労働者の方が多数存在していたのです。

しかし、令和3年に最高裁判決によって国の責任が認められたことを受け、令和4年から建設アスベスト給付金制度がスタートしています。これにより、一定の要件を満たした方は、国から給付金を受けることが可能となりました。

本記事では、建設アスベスト給付金制度の概要と、給付金制度がスタートするまでの歴史について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、建設アスベスト給付金制度とは

過去に建設業務に従事していた労働者や一人親方・中小事業主(以下「労働者等」といいます)の方がアスベストによる健康損害を受けたのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからとして、国に対して、当時労働者等であった方やそのご遺族の方が損害賠償を請求した訴訟、いわゆる『建設アスベスト集団訴訟』は、令和3年(2021年)5月に、一定の範囲で国の責任を認める判決が言い渡されました。

最高裁の判決を受け、国は、令和3年6月9日、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」(以下「給付金支給法」といいます。)を制定し、一定の要件を満たす被害者の方やその遺族に対して、速やかに給付金を支給する制度を創設しました。

  1. (1)いつから受給できるのか

    給付金支給法は令和4年(2022年)1月19日から施行されたのち、給付金請求の受け付けが開始されました。
    給付金を請求すると、厚生労働省において審査・認定が行われ、認定されると指定した口座に給付金が振り込まれます。

  2. (2)給付金の請求方法

    建設アスベスト給付金を請求するには、必要書類を厚生労働省の所定の課宛てに郵送する必要があります。これらを郵送する場合は、簡易書留やレターパックなど、配達状況が把握できる方法を選択すると良いでしょう。

    主な必要書類としては、『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等請求書』のほか、就業歴や石綿ばく露作業への従事していたことが分かる資料などが必要になります。
    ただし、請求者が本人か遺族か、労災保険給付など他の補償をすでに受けているかどうかなどによって、必要な書類は異なるため注意が必要です。

    具体的な書類については厚生労働省のホームページでも公開されていますが、弁護士に依頼すると、書類の準備や請求までサポートしてもらえるので安心です。

2、建設アスベスト給付金を受給できる要件

給付金を受給できる要件は、「特定石綿ばく露建設作業」に従事していた労働者等やその遺族であり、業務が原因で「石綿関連疾病」を発症していることです。
また、請求期限が限られていることにも注意しなければいけません。

  1. (1)特定石綿ばく露建設業務に従事していた労働者等やその遺族であること

    特定石綿ばく露建設作業とは、次のような建設業務のことを指します。それぞれ、定められた期間中に所定の作業に従事していた労働者等であることが必要となります。
    なお、「労働者等」とは、企業等に雇用されていたケースだけでなく、一人親方や中小事業主(家族従事者等も含みます)も対象です。

    ● 石綿の吹き付けの作業にかかる建設業務
    対象期間|昭和47年(1972年)10月1日~昭和50年(1975年)9月30日
    ● 屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務
    対象期間|昭和50年(1975年)10月1日~平成16年(2004年)9月30日

    『屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務』に該当するのは、次の状況を満たす場所と定めています。

    • 屋根がある
    • 側面の面積の半分以上が外壁などに囲まれ、外気が入りにくい
    • 外気が入りにくいことにより、石綿の粉じんが滞留するおそれのある作業場

    ただし、これらに該当するか微妙なケースもあります。『該当しないかも…』と思われた場合も、一人で判断せず、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

  2. (2)石綿関連疾病を発症したこと

    アスベストが原因で発症する疾病というと中皮種や肺がんのイメージが強いですが、具体的には次にあげる疾病を発症した場合に請求対象となります。

    • 中皮腫
    • 肺がん
    • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
    • 石綿肺(じん肺管理区分で管理2~4に相当するもの)
    • 良性石綿胸水
  3. (3)遺族の請求順位に注意

    請求要件を満たしている労働者等が、すでに石綿関連疾病で亡くなっている場合は、遺族が給付金を請求できます。

    ただし、給付金の支給対象となる遺族は、内縁を含む配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で、最先順位の人に限られます。つまり、配偶者が1番目の順位であり、兄弟姉妹は6番目の順位になります。
    同順位の遺族が複数いる場合は、代表者1人が請求します。

  4. (4)請求期限があることに注意

    給付金の請求には、請求期限があるため、たとえ要件を満たしていても期限を超過してしまうと、請求することはできなくなります。

    請求期限の原則は、①②のいずれか遅い方の日を起算日として20年です。

    • ① 石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断を受けた日
    • ② 管理2~4のじん肺管理区分の決定を受けた日

    なお、被災者が石綿関連疾病により亡くなっている場合は、亡くなった日から起算して20年となります。

3、建設アスベスト給付金として支給される金額

給付金の額は、疾病の類型ごとに基本的な金額が定められていますが、一定の事由がある場合には減額されます。

  1. (1)疾病ごとの支給額

    疾病の類型ごとに支給額は分かれており、550万円~1300万円の範囲で支給額が定められています。

    疾病の類型 給付金の額
    1 石綿肺(石綿肺管理2・じん肺法所定の合併症なし) 550万円
    2 石綿肺(石綿肺管理2・じん肺法所定の合併症あり) 700万円
    3 石綿肺(石綿肺管理3・じん肺法所定の合併症なし) 800万円
    4 石綿肺(石綿肺管理3・じん肺法所定の合併症あり) 950万円
    5 中皮腫、肺がん、著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(石綿肺管理4)、良性石綿胸水 1150万円
    6 1または3で死亡した場合 1200万円
    7 2、4、5で死亡した場合 1300万円

    なお、給付金を受給した後に症状が悪化し、疾病の類型が変わった場合は、追加給付金の請求ができます。追加請求した場合は、すでに受けた支給額との差額が支給されます。

  2. (2)支給額が減額されるケースもある

    給付金制度の条件を満たす場合でも、特定石綿ばく露建設業務に従事していた期間が、一定の期間を下回る場合は、支給額が10%減額されます。期間は、疾病によって次のように定められています。

    • 肺がん・石綿肺の場合…10年未満
    • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の場合…3年未満
    • 中皮腫・良性石綿胸水の場合…1年未満

    また、肺がんについては、喫煙の習慣があった場合にさらに支給額が10%減額されます

    そのため肺がんについては、従事していた期間が減額に該当し、かつ喫煙習慣もあった場合は、期間該当によって10%減額された金額から、さらに10%減額されることになるので、満額の給付金から19%減額されることになります。

4、給付金制度が創設された背景~アスベスト法改正の歴史

ここまで、アスベスト給付金制度の概要について解説しましたが、今日にいたるまでは長い歴史があります。アスベストが規制されるまでの背景について、改めて振り返ってみましょう。

  1. (1)昭和35年(1960年) じん肺法の施行

    この年には、じん肺法が制定・施行されることで、粉じん(アスベストも含む)にさらされる作業に従事する労働者に対して定期的な健康診断が義務づけられ、その結果に応じてじん肺管理区分の決定が行われるようになりました。これがアスベストに対する対策の始まりです。

  2. (2)昭和50年(1975年) アスベスト含有率5%を超える吹き付けの原則禁止

    この年には、アスベスト含有率5%を超える吹き付け作業を原則禁止されることとなりました。1970年代は、労働安全衛生法、同施行令、労働基準法特定化学物質等障害予防規則等をはじめとする関連法令が徐々に整備され、アスベストの使用が段階的に禁止されていきます。

  3. (3)平成7年(1995年) アスベスト含有率1%を超えるアスベストの吹き付け禁止

    この年には、規制がさらに強化され、吹き付け作業に使用するアスベストについて、含有率が1%を超えるものの使用は禁止されました。また、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)については、製造、輸入、使用が禁止されました。

  4. (4)平成16年(2004年) アスベストを含む建材等の使用禁止

    アスベストを含有する建材、摩擦材、接着剤等10品目について、製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則として禁止されました。

  5. (5)平成18年(2006年) アスベストの使用を原則として全面禁止

    含有率が0.1%を超えるアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用がほぼ全面的に禁止されました

  6. (6)令和4年(2022年) 建設アスベスト給付金支給制度のスタート

    アスベストの使用は禁止された後も、被害を受けた方の救済はなかなか進みませんでした。しかし、国の責任が認められ給付金制度がスタートしたことで、アスベスト健康被害の問題は大きく前進したといえます。

5、まとめ

建設アスベスト給付金制度の要件に該当する期間にお仕事に従事し、アスベストを吸っていたとしても、ご自身やご家族が、給付金の要件に該当するのかわからないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。すでに長い年月がたっているため、退職されている方は多く、また当時勤めておられた会社がすでに廃業しているケースもあるかもしれません。

少しでも思い当たることがある方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、アスベスト健康被害に関するご相談は、無料でご利用いただけます。経験豊富な弁護士が、しっかりとお話を伺いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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