医療過誤について
2024年08月14日

医療ミスを疑ったときの相談先や弁護士に相談するメリットとは?

医師や看護師など医療機関側のミスで病態が悪化した場合、損害賠償請求できる可能性があります。しかし、具体的にどうすれば損害賠償請求を行えるのか、よくわからないという方も多いでしょう。

医療ミス(医療過誤・医療事故)を疑ったとき、もしくは実際に医療ミスに遭ったときは、公的機関や弁護士に相談しましょう。特に、医師・医療機関に対する損害賠償請求については、示談交渉や訴訟対応が可能である弁護士にご相談ください。

本コラムでは、医療ミスに関する相談先や損害賠償請求、弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 医療調査・医療訴訟チームの弁護士が解説します。

1、医療ミスを疑った場合の相談先

ご自身やご家族が医療ミスの被害に遭ったことが疑われる場合、医師や医療機関に対して損害賠償を請求できる可能性があります。どうするべきか迷われた際には、専門機関などへ速やかに相談しましょう。

<医療ミスに関する4つの相談窓口(相談機関)>
① 医療安全支援センター
都道府県および保健所を設置する市・特別区により、医療法に基づいて設置された公的機関です。医療安全に関する助言や情報提供を行っています。
参考:医療安全支援センター総合事業

② 医療事故情報センター
全国各地の弁護士が正会員となって運営する任意団体です。医療事故の被害回復や再発防止を目的とする活動を行っています。
参考:医療事故情報センター

③ 日本医療安全調査機構
医療法上の医療事故調査・支援センターに指定されている一般社団法人です。医療事故の再発防止等を目的とする活動を行っています。
参考:一般社団法人日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)

④ 各都道府県の弁護士会
全国の弁護士会では、裁判外で医療紛争を解決する「医療ADR」を運営しています。
参考:「医療ADR」(日本弁護士連合会)

2、医療ミスの被害を弁護士に相談するメリット

医療ミスの被害は各種公的機関のほか、弁護士に直接相談することもできます
医療ミスの被害について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • ① 医療ミスの原因調査・証拠収集(証拠保全を含む)を依頼できる
  • ② 示談交渉・訴訟の対応を依頼できる
  • ③ 損害賠償請求の見通しがわかる
  • ④ 精神的なサポートを受けられる

それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。

  1. (1)医療ミスの原因調査・証拠収集を依頼できる

    医療行為は医療機関の施設内で行われるため、患者側にとって、医療ミスの原因調査や証拠収集は非常に困難です。

    しかし弁護士に相談すれば、医療ミスに関する原因調査や証拠収集に役立つさまざまな対応を依頼できます。

    <弁護士ができることの例>
    • 弁護士会照会(弁護士法第23条の2)
    • 文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条)
    • 証拠保全の申立て(同法第234条)
    など

    上記のような弁護士の対応により、医療ミスの原因調査や証拠収集を徹底的に行えば、損害賠償が認められる可能性が高まります。

  2. (2)示談交渉・訴訟の対応を依頼できる

    弁護士には、医療ミスに関する医療機関・医師との示談交渉や、損害賠償請求訴訟の対応についても全面的に依頼できます。

    弁護士に示談交渉や訴訟対応を任せることにより、法的な根拠に基づいた説得力のある主張を行うことが可能となります。また、ご自身もしくはご家族の時間・労力・精神面での負担が軽減されることも、弁護士に対応を一任するメリットです。

  3. (3)損害賠償請求の見通しがわかる

    医療ミスに関する損害賠償請求を行うに当たっては、長い時間と多額の費用を要するケースが多い点に留意が必要です。そのため、実際に損害賠償請求を行うかどうかは、法的な観点から勝てる見込みがどの程度あるかをしっかりと検討した上で判断するべきといえるでしょう。

    弁護士は、治療に関する具体的な事情を踏まえた上で、損害賠償請求が認められる可能性についてアドバイスをすることが可能です。そのため、今後どうすればよいのかというご判断を適切に行えるようになります。

  4. (4)精神的なサポートを受けられる

    医療ミスの被害により、納得できない気持ちや悲しみなど、大きなストレスを抱えている方は少なくないでしょう。

    大変な状況に置かれているご自身やそのご家族にとって、いつでも相談できる頼もしいサポーターがいることは、精神的な支えとなり得ます。弁護士は、心情に寄り添いながら、お力になれるようにサポートいたします。

3、医療ミスの損害賠償が認められるための要件

医療ミスの損害賠償は、債務不履行または不法行為が成立する場合に認められます。
ただし、損害賠償請求権の消滅時効が経過すると、請求が認められなくなることにご注意ください。

  1. (1)債務不履行または不法行為に該当する必要がある

    医療ミスに関する損害賠償請求が認められるためには、債務不履行(民法第415条第1項)または不法行為(民法第709条)に該当することが必要です。

    • 債務不履行
      医療機関側が診療契約に基づく注意義務を怠ったことにより、患者の病態が増悪した、または患者が死亡したケースでは債務不履行が成立します。
      医療機関側の負う注意義務の内容は、診療当時の医療水準をもとに決まります(=医療水準論)。
    • 不法行為
      医療機関側の故意または過失により、患者の病態が増悪した、または患者が死亡したケースでは不法行為が成立します。
      不法行為における過失の有無は、債務不履行と同様、医療水準論をベースとして判断されます。

    債務不履行と不法行為のいずれについても、損害賠償請求に当たって患者側が立証するべき事項はおおむね共通です。患者側はいずれか一方を選択して請求することも、両方を請求することもできます(ただし、二重取りは不可。)。

  2. (2)医療ミスの損害賠償が認められる場合の具体例

    たとえば以下のようなケースでは、医療ミスに関する損害賠償請求が認められる可能性が高いといえます。

    • 医師が手術中にミスをした結果、患者が死亡した
    • 看護師が投与するべきではない禁忌医薬品を投与してしまい、患者がアナフィラキシーショックで死亡した
    • 手術に伴うリスクについて、医師が患者へ十分に説明しなかったところ、手術中に患者が急変して死亡した
    など
  3. (3)損害賠償請求権の消滅時効に要注意

    医療ミスの損害賠償請求権は、法で定められた期間が経過すると、時効によって消滅します。

    ① 債務不履行に基づく損害賠償請求権
    以下のいずれかが早く経過する期間(民法第166条)
    • 権利を行使できることを知ったときから5年間
    • 権利を行使できるときから10年間

    ② 不法行為に基づく損害賠償請求権
    以下のいずれかが早く経過する期間(民法第724条、第724条の2)
    • 損害および加害者を知ったときから5年間
    • 不法行為のときから20年間

    ※時効期間の起算点:後遺症が発生した場合にはその発症時(または発症の診断を受けたとき)、死亡した場合には死亡時(または死亡を知ったとき)

    消滅時効の完成を阻止するためには、医療機関側へ内容証明郵便の送付や訴訟の提起などを行う必要があるため、お早めに弁護士へご相談ください。

4、医療ミスで損害賠償が命じられた裁判例

医療ミスについて、実際に損害賠償請求が認められた2つの裁判例をご紹介します。

  1. (1)東京地裁平成14年7月18日判決

    頸動脈の分岐部に未破裂脳動脈瘤が発見された患者に対し、医師がコイル塞栓術を実施したものの成功せず、患者が死亡した事案です。

    東京地裁は、手術手技等について医師の過失を認定しなかったものの、コイル塞栓術の術中の危険性について、患者が理解できる程度の十分な説明義務を尽くさなかった点につき過失を認定しました。
    その一方で、患者が手術を受けなかった場合の脳動脈瘤破裂の可能性や、手術によっても後遺症や死亡等の可能性があったことを考慮して、3割の素因減額(損害賠償金の減額)を行いました。

    最終的に東京地裁は、病院に対して総額6600万円余りの損害賠償を命じました。

    本事案の主なポイントは、以下の各点のとおりです。

    • 手術手技に関する過失がなくても、説明義務違反があれば高額の損害賠償が認定され得る(インフォームド・コンセント)
    • 手術前の患者の状態によっては、損害の公平な分担の観点から、過失相殺に準じて素因減額(損害賠償金の減額)が行われることがある
  2. (2)横浜地裁平成21年6月18日判決

    心臓手術中に患者が死亡し、遺族が病院と医師を提訴した事案です。

    横浜地裁は、手術中に心筋保護液を注入するタイミングが遅れたことによって、心筋の保護が不十分となり心筋梗塞を引き起こしたことを認定しました。

    本事案では、医師の負う注意義務の内容を具体的に特定した上で、注意義務違反の有無に関する詳細な認定が行われています。
    横浜地裁は、心停止時間の管理等については、医師の過失を認めませんでした。その一方で、おおむね20分間隔で注入されていた心筋保護液が、42分間注入されなかった時間帯があることに注目して医師の過失を認定しました。

    最終的に横浜地裁は、病院と医師に対し、総額約7500万円の損害賠償を連帯して遺族へ支払うよう命じました。

5、まとめ

医療ミスの被害に遭ったら、医療機関や医師などに損害賠償を請求できる可能性がありますので、まずは速やかに弁護士に相談することがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所は、医療ミス・医療訴訟に関する法律相談を随時受け付けております。生じてしまった被害をできる限り回復できるように、医師と連携して医療調査を行い、医療機関側に対する損害賠償請求を全面的にサポートいたします。

ご自身やご家族が医療ミスの被害者となってしまったら、医療調査・医療訴訟チームを編成するベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階(東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585 [ご相談窓口]0120-056-095
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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