医療過誤について
2024年05月30日

チーム医療のメリット・デメリットと医療過誤による責任追及

病院やクリニックには、さまざまな職種のメディカルスタッフ(医療専門職)が働いています。近年では、医療技術の高度化や複雑化が進み、ひとりの医師だけでは対応できない分野も増えてきています。そのような場合には、多職種の医療専門職による「チーム医療」が実施されるようになりました。

そのようなチーム医療には、メリットだけでなくデメリットもあります。もしチーム医療において医療過誤(治療における人為的ミス)があった場合には、誰がどのような責任を負うことになるのか、疑問に思う方もいるでしょう。

本コラムでは、チーム医療のメリット・デメリットと医療過誤の責任追及について、ベリーベスト法律事務所 医療調査・医療訴訟チームの弁護士が解説します。

1、チーム医療とは? どのようなチームが構成される?

まずは、チーム医療とはどのようなものなのか、概要を解説します。

  1. (1)チーム医療とは

    チーム医療とは、ひとりの患者に対して、複数・多職種の医療専門職が連携して、治療やケアにあたる体制のことをいいます

    一般的な治療では、ひとりの患者に対して、ひとりの医師が対応するため、基本的に横の連携はありません。しかし、医療技術の高度化や複雑化が進み、医師ひとりだけでは、専門外のことについての対応が困難になっているのが現状です。

    そこで、さまざまな専門分野を持った医療専門職が連携するチーム医療により、患者に対して、適切な治療を実施することが可能になります。

  2. (2)チーム医療に関わる医療専門職

    チーム医療には、さまざまな医療専門職が携わります。

    <チーム医療に関わる代表的な医療専門職>
    • 医師
    • 看護師
    • 臨床心理士
    • 細胞検査士
    • 臨床検査技師
    • 理学療法士
    • 薬剤師
    • 精神保健福祉士
    • 診療放射線技師
    • 診療情報管理士
    • 視能訓練士
    • 歯科衛生士
    • 作業療法士
    • 言語聴覚士
    • 管理栄養士
    • 医療ソーシャルワーカー
  3. (3)チーム医療として構成される体制(チーム)の例

    実際にチーム医療として構成されるチームの例を、4つご紹介します。

    <チーム医療の構成例>
    ・栄養サポートチーム
    食欲が低下している患者や栄養状態の悪化した患者に対して、適切な栄養管理を行い、合併症の予防や全身状態の改善を目指す目的で構成されるチーム
    ・呼吸ケアチーム
    主に人工呼吸器を装着した患者に対して、呼吸ケアや人工呼吸器離脱の促進などにより、呼吸状態の改善を図る目的で構成されるチーム
    ・緩和ケアチーム
    がんの痛みなどのつらい症状、不安などの精神的な苦痛を和らげて、患者および家族がその人らしい終末期を過ごせるようにサポートするチーム
    ・感染症対策チーム
    病院内で起こるさまざまな感染症を予防・低減し、患者や家族、職員などの健康と安全を守るために構成されるチーム

2、チーム医療のメリット・デメリット

2章では、チーム医療のメリットおよびデメリットについて説明します。

  1. (1)チーム医療のメリット

    チーム医療には、以下のような3つのメリットがあります。

    ① 医療・生活の質の向上
    チーム医療では、複数の医療専門職による治療やケアを受けることが可能です。そのため、ひとりの医師による治療に比べて、患者はきめ細かい治療やケアを受けることができます。

    さまざまな医療専門職からアドバイスを受けることにより、早期回復も期待できるでしょう。
    このようにチーム医療は、医療・生活(生命)の質が向上するというメリットがあります。

    ② 医療安全の向上
    ひとりの医師では、自分が専門とする分野以外の治療に対応することができず、何らかの症状や異常があったとしても見落としてしまうリスクがあります。

    しかし、チーム医療では、複数の医療専門職が連携し、各医療専門職の専門的な知見に基づき判断できるため、医療ミスを防止するなど医療安全の向上が期待できます。

    患者としても必要な時期に必要な医療の提供を受けることができるため、生活(生命)の質の向上にもつながります。

    ③ 医療の効率性の向上
    チーム医療では、複数の医療専門職が連携します。そのため、それぞれの医療専門職は自分の専門領域に集中して取り組むことができます。

    それにより医療専門職ひとりあたりの業務負担が軽減され、患者としては、より効率的に医療の提供を受けることが可能となります。

  2. (2)チーム医療のデメリット

    チーム医療には、以下のような2つのデメリットがあります。

    ① コミュニケーション不足になりやすい
    チーム医療は、コミュニケーション不足になりやすいというデメリットが指摘されています。
    複数の医療専門職が関与するため、情報伝達の方法などが確立されていなければ、必要な情報が共有できず、患者に対して適切な医療を提供することができません。

    このようなコミュニケーション不足が常態化している医療機関では、医療過誤(治療における人為的ミス)が発生するリスクも高くなるでしょう。

    ② 医療専門職の技量にばらつきがある
    チーム医療に関与する医療専門職の技量にはバラつきがあるため、常に最高の医療を受けることができるとは限りません。医師の技量が高くても、周囲の医療スタッフの技量が足りなければ、生活(生命)の質の低下を招く事態になりかねないのです。

    患者側としては、チーム医療に安心感を抱くかもしれませんが、医療専門職の技量によっては、満足いく医療の提供を受けられない可能性もあることに注意が必要です。

3、チーム医療における医療過誤があったときの医療従事者の責任

チーム医療において医療過誤(治療における人為的ミス)があった場合、医療従事者にはどのような責任が生じるのかについて解説します。

  1. (1)チーム医療における各医療従事者の責任

    チーム医療では、医師以外にも、看護師や薬剤師、放射線技師などさまざまな職種が関与します。また、医療従事者の地位も診療課長や指導医、主治医、研修医などさまざまです。

    医療過誤が発生した場合には、それぞれの医療従事者が負うべき注意義務がしっかりと果たされていたかが、責任追及にあたってのポイントになります

    すなわち、医療過誤が発生したからといって、チーム医療に携わった医療従事者すべてが法的責任を負うわけではありません。職種ごと、地位ごとにそれぞれの注意義務の内容を明確
    にし、各人に注意義務違反があったかどうかという視点で検討することが求められます。

  2. (2)医療従事者側への責任追及には証拠が必要

    チーム医療により、後遺障害が生じる・死亡に至るなどといった結果になったとしても、それだけで医療従事者側の責任追及をすることはできません。

    医療従事者側に対して損害賠償請求をするためには、医療従事者側に注意義務違反(過失)があったことを証拠によって立証していく必要があります

    医療従事者側と被害患者側とでは、知識や情報量において圧倒的な格差があるため、医療過誤が発生したとしても、責任を立証できず責任追及を諦めてしまうというケースも少なくありません。

    被害患者側が医療従事者側を相手に責任追及をするのは困難なケースも多いため、まずは、医療過誤の問題を扱っており、知見・経験のある弁護士に相談することをおすすめします。

4、医療過誤を疑ったときに弁護士に相談するべき理由

医療過誤の疑いが生じたときは、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)医療調査により医療従事者側の責任の有無を判断できる

    医療過誤の問題に詳しい弁護士であったとしても、被害患者側の話を聞いただけでは、医療過誤があったのかを正確に判断することはできません。

    医療従事者側に責任追及をするためには、医療過誤に関して医療従事者側に注意義務違反があったことを立証することが求められます。そのためには、診療記録等の精査を行う医療調査が不可欠です

    医療調査とは、開示請求や証拠保全によるカルテなどの収集、医療文献の調査、協力医からのアドバイスなどにより医療従事者側の責任の有無等に関する見通しを把握するために調査することをいいます。

    医療過誤の問題に詳しい弁護士であれば、被害患者側の手元にほとんど資料がない状態からであっても、カルテ開示などによって適切な証拠を収集し、医療従事者側の責任の有無を明らかにすることが可能です

  2. (2)代理人として医療従事者側との交渉を行うことができる

    医療従事者側の責任が明らかになった場合には、被害患者側は、まずは医療従事者側との交渉により、損害の賠償を求めていくのが一般的です。

    しかし、知識や情報量において圧倒的に有利な立場にある医療従事者側を相手に交渉を進めていくことは困難であり、大きなストレスにもなるでしょう。

    弁護士に依頼をすれば、弁護士が代理人として医療従事者側との交渉を担当することが可能です。医療過誤の問題に詳しい弁護士であれば、医療従事者側と対等な立場で交渉を進めることができるため、適切な条件で示談を成立できる可能性が高くなるでしょう

  3. (3)専門的かつ複雑な医療訴訟も対応が可能

    医療従事者側との交渉で医療過誤の問題が解決しないときは、裁判所に医療訴訟の提起が必要になります。

    一般的な民事訴訟とは異なり、医療訴訟は、非常に専門的かつ複雑な手続きになりますので、被害患者側本人では、適切に訴訟を進めていくのは難しいでしょう。

    医療従事者側の責任を明らかにし、適正な賠償を受けるためにも、医療過誤の問題を取り扱っている弁護士のサポートが不可欠です。医療従事者側への責任追及をお考えの方は、まずは弁護士にご相談ください。

5、まとめ

チーム医療には、質の高い医療の提供を受けることができるというメリットがある反面、医療スタッフ間のコミュニケーション不足により医療過誤が発生するリスクがあるというデメリットも存在します。

チーム医療により医療過誤が生じた疑いがある場合には、弁護士のサポートが不可欠です。

ベリーベスト法律事務所は、医療調査・医療訴訟チームを編成し、専門的かつ複雑な医療過誤の問題解決に取り組んでおりますので、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。
医療調査・医療訴訟チームの弁護士が誠心誠意、解決に向けて対応いたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階(東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585 [ご相談窓口]0120-056-095
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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