医療過誤について
2024年05月16日

これって医療ミス? 相談先や訴訟から解決の流れを弁護士が解説

「医療機関で治療を受けたものの、かえって症状がひどくなってしまった」「家族が手術中または手術後に亡くなってしまった」
このような場合には、医療ミス(医療過誤)の疑いがあります。

医療ミスの被害者や遺族は、医療機関側に対して、損害賠償を請求できる可能性があるだけでなく、損害の程度によっては多額の損害賠償金を得られる可能性もあるでしょう。それ以上に、真実を明らかにしないことに許せない気持ちがある場合には、法的手段を取ることによって、真相を解明することが可能です。

医療訴訟(医療過誤訴訟)は、一般的な訴訟に比べると勝つのが難しいといわれています。しかしこれは、医療分野に精通した弁護士が少ないがゆえのことです。
適切な専門家とともに丁寧に準備を整えて訴訟を提起すれば、適切な賠償金を得られる可能性は十分にあります。

本コラムでは、医療ミスの責任を追及する医療訴訟について、相談先・勝訴率・手続き・注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
ベリーベスト法律事務所は、医師や医療機関で勤務経験がある弁護士等と密な連携をとっているため、医療過誤事件については、安心してご相談ください。

1、医療ミス(医療過誤)とは

医療ミスとは、医療機関側の人為的ミスが原因で、もともと患者の良くなかった病態をさらに悪化させてしまうことです。別称で、医療過誤と呼ばれることもあり、これはヒューマンエラーと言えます。

医療安全の観点からは、ヒューマンエラーはシステム構築が不十分な場合に生じると言われています。すなわち、医療安全のシステムのうち、ヒューマンエラーが生じるような場所はシステム化して、組織でカバーしましょうということです。

たとえば、以下のような例が医療ミス(医療過誤)に該当します。

  • 医師が手術に失敗※1したことで患者が死亡した
  • 医師が手術の際に不適切※2な部位を切開した、適切に医薬品を扱わなかったなどの理由で、患者に重篤な後遺症がのこった
  • 問診を適切に行わなかったことで、その患者にとって禁忌※3の医薬品を投与してしまい、アナフィラキシーショックを発症した

  • ※1 この【失敗】を医学的・法律的に裁判官に対して説明することが必要なところ、両方の専門知識がないと困難です
  • ※2 何が【不適切】であり、何が【適切】なのかについても、医学的・法律的に裁判官に対して説明する必要があります
  • ※3 【禁忌】と言っても相対的禁忌と絶対的禁忌があり、また、その投与量によって【適切か否か】が変わってくるので、この辺りも医学的・法律的に専門的見地が必要です

医療ミスを犯した医師・医療機関は、以下の法的責任を負う可能性があります。

  • 民事上の損害賠償責任(民法第415条第1項、第709条)
  • 刑事責任(業務上過失致死傷罪。刑法第211条)
  • 行政上の責任(戒告、3年以内の医業の停止、医師免許の取り消し。医師法第7条第2項)

2、医療ミスを疑った場合の対処法・相談先

治療や手術を受けた結果、かえって症状が悪化した場合や、家族が術中・術後に死亡した場合などには、医療ミスの可能性もあります。

ただ、医療は絶対なものではありません。継続的に治療を受けている場合には、医師との関係性を重視して、争訟をすることよりも最善の医療を受けることを最優先してください。しかし、医師側が信頼関係を断ち切ってくるときもあります。その時には争訟を見据えた対策も有効です。
ここからは、医療ミスの可能性がある場合の対処法と相談先を紹介します。

  1. (1)医療ミスを疑った場合の対処法

    医療ミスを疑った場合は、医療機関側に対して、治療や手術に関連する書類(カルテなど)の開示を求めるところからスタートします。

    医療機関側から開示を受けた書類を確認すれば、医療ミスの痕跡などが残されているかもしれません。より率直に言えば、カルテを見なければ何もわかりません。ただし、カルテなどの書類を読み解くには専門的な知識が必要です。

    カルテはご自身やご家族が請求することもできますし、弁護士に依頼して取り寄せることも可能です。医療機関が拒絶した場合には、証拠保全をすることも可能です。

    カルテの開示にいたずらに時間をかけられることもよくあり、そもそもカルテの開示を請求すると嫌な顔をされることも多いです。

    そのため、適切な相談先へ速やかに相談して、今後の対応については専門的なアドバイスを受けましょう。

  2. (2)医療ミスに関する相談先

    医療ミスに関する相談先としては、まず日本全国各地域にある医療安全支援センターが挙げられますが、ほとんど機能していないといえるでしょう。

    医療安全支援センターは、医療法に基づき設置された公的機関です。医療ミスに関する相談についても受け付けており、今後の対応について一般的なアドバイスを受けられます

    ただし医療安全センターは、医療ミスの損害賠償請求に関して、具体的な相談に乗ってくれるわけではありません

    この先、実際にどう行動していくべきかといった具体的な判断は、個別の状況を検討した上で対応する必要があるため、詳しくは弁護士へのご相談をおすすめいたします。

  3. (3)医療ミスを弁護士に相談するメリット

    医療ミスの被害につき、弁護士に相談することの主なメリットは以下のとおりです。

    ① 損害賠償を得られるかどうかの見通しがわかる
    損害賠償請求の成否は、実際の治療や手術の内容、診療当時の医療水準、証拠収集の見込みなどによって左右されます。

    弁護士は、医療機関のカルテ等の資料を検討し、法的・客観的な視点からこれらの要素を分析・検討し、損害賠償金を得られる見込みはどの程度か、金額はどのくらいになりそうかなどについてアドバイスすることが可能です。

    ② 原因調査・証拠収集を依頼できる
    医療ミスの損害賠償請求を行うに当たっては、医療機関側の故意・過失を立証し得る証拠の確保が極めて重要です。
    弁護士は、弁護士会照会(弁護士法第23条の2)や訴訟手続における文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条、第223条第1項)などを通じて、医療ミスの原因調査や証拠収集などを徹底的に行います

    ③ 実際の損害賠償請求を全面委任できる
    医療ミスに関する損害賠償請求は、医療機関側との示談交渉や、訴訟などの法的手続を通じて行います。
    弁護士は、これらの手続きを全面的に代行し、被害者やご家族にご負担をかけることなく、スムーズに損害賠償を得られるようサポートすることが可能です。

3、医療訴訟(医療過誤訴訟)は勝つのが難しい?

医療機関側に対して医療ミスの責任を追及するため、損害賠償を命ずる判決を求めて裁判所に提起する訴訟のことを、医療訴訟(医療過誤訴訟、医療裁判)といいます。一般的には、医師や医療機関側との示談交渉から始めて、任意交渉では解決しない場合にADRや訴訟手続きへと移ります。

医療訴訟は統計上、一般的な訴訟に比べて勝訴率が低くなっているのが実情です。
しかし、弁護士とともに十分な証拠をそろえて医療訴訟を提起すれば、勝訴の可能性はゼロではなく、和解等による解決の可能性もあります。最初から諦めずに、まずは弁護士へご相談ください。

  1. (1)医療訴訟とは

    医療訴訟とは、医療ミス(医療過誤)の被害を受けた患者側を原告、医師や医療機関を被告として行われる、医療ミスに関する損害賠償請求訴訟です。非公開で行われる示談交渉や調停手続などとは異なり、医療訴訟は原則として公開の法廷(一般の人も傍聴できる法廷)で行われます。

    医療訴訟の争点となるのは、主に以下のポイントです。

    ① 診療当時の医療水準
    医療ミス(医療過誤)に関する過失の有無は、診療当時の医療水準を基準に判断されます。
    そのため医療訴訟では、診療当時の医療水準の内容・程度を巡って、被害者と医療機関側が激しく争うことがあります。

    ② 医師の過失の有無
    問診の不備、禁忌医薬品の投与、手術中のミスなど、医師の行為について過失(=注意義務違反)が認められるか否かが重要な争点です。

    ③ 医療機関による管理上の過失の有無
    チーム体制やチェック体制の不備など、医療機関側の管理上の過失があったか否かも、医療訴訟における損害賠償請求の結論を左右し得る要素のひとつとなります。

    ④ 因果関係
    医師または医療機関側の過失が認められるとしても、医療機関側は、過失と患者の損害(病態の増悪・死亡)の間には因果関係がないとして争うケースが多いです。
    たとえば、「ミスがなかったとしても、患者を救うことはできなかった」「医療ミス以外の別の原因によって患者が死亡した」などと主張してくる可能性があります。

    ⑤ 治療方法に関する説明義務違反の有無
    医療ミス自体が認定されないとしても、医師・医療機関が患者に対して治療方法に関する説明義務を尽くさなかった場合、患者の自己決定権を侵害したものとして損害賠償責任を負うことがあります。
    ただし、医療ミスが認定される場合に比べると、認定される損害賠償額は低額になるのが一般的です。
  2. (2)医療訴訟における勝訴率

    裁判所が公開する資料によると、令和元年から令和3年に言い渡された第一審判決総数のうち、原告側の請求の全部または一部が認容された割合は、通常訴訟と医事関係訴訟で以下のとおりです。

    通常訴訟 医事関係訴訟
    令和元年 85.9% 17.0%
    令和2年 86.7% 22.2%
    令和3年 84.3% 20.1%

    出典:「地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率」(裁判所)

    このデータを見ると、医事関係訴訟(医療訴訟)における原告の勝訴率は、一般的な訴訟に比べてかなり低いことがわかります。しかし、2割前後のケースでは認容されていますので、きちんと準備を整えれば勝訴の可能性は十分にあるというべきです。

    また、上記の数値には和解等の件数が含まれていません。そのため、被害者が損害賠償を得られた割合は、実際にはもっと多いものと考えられます。

    医療ミスの被害を疑った際は、諦めずに弁護士へご相談ください。

4、医療訴訟の提起から解決までの流れ

医療訴訟は、以下の流れで進行します。

① 弁護士に調査・検討を依頼する
医療訴訟は専門的な対応が求められるため、医療分野に精通した弁護士への依頼が必要不可欠です。まずは弁護士に医療事故の調査や証拠収集などを依頼し、損害賠償請求の成否の見通しについてアドバイスを受けましょう。

② 損害賠償請求の方法・方針を決定する
弁護士による調査・検討の結果を踏まえて、請求する損害賠償の金額や和解に応じるライン、示談交渉や訴訟の進め方などに関する方針を決定します。

③ 訴状等の作成・提出
医療訴訟を提起する場合は、訴状を提出して裁判所に提出します。また、原告の主張を裏付ける証拠書類や主張書面も随時提出します。
弁護士には、訴状等の作成・提出を全面的に依頼することが可能です。

④ 口頭弁論期日(+争点整理、和解)、弁論準備期日
裁判所が指定した期日において、公開の法廷での口頭弁論期日や非公開での弁論準備期日での審理が行われます。基本的には事前に提出した書面に沿って主張を行いますが、審理が進めば、当事者尋問や証人尋問が行われるということも念頭に置いておきましょう。
なお、口頭弁論期日の間には、争点整理期日や和解期日が設けられることもあります。

⑤ 判決・上訴
審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。判決書の送達日から2週間以内であれば控訴ができ、控訴審判決に対しては上告が認められる場合もあります。

⑥ 判決の確定
控訴・上告期間の経過、または上告審判決の言い渡しによって判決が確定します。
請求認容の場合、確定判決に基づき損害賠償の精算を行います。医師・医療機関側が支払に応じない際には、強制執行の申立てが可能です。

5、医療訴訟を提起する際の注意点

医療ミスについては、いきなり医療訴訟を提起するのではなく、医師・医療機関との交渉から始めるのが一般的です。示談でまとまれば、医療訴訟よりもはるかに短期間での解決が期待できます。

交渉でまとまらない場合、医療ADRや調停手続きなどを利用する選択肢もあります。弁護士に相談しながら、適切な手続きを選択しましょう。

もし医療訴訟を提起するときは、手続きの長期化を覚悟しなければなりません。長期間にわたる医療訴訟には、信頼できる弁護士のサポートが必要不可欠です。

医療訴訟を提起するに当たっては、損害賠償請求権の消滅時効にも注意が必要です。以下の期間が経過すると、損害賠償請求権は時効消滅してしまいます。

① 債務不履行に基づく損害賠償請求権
  • 権利を行使できることを知ったときから5年間
  • 権利を行使できるときから10年間
上記のうち、いずれか早く経過する期間(民法第166条)

② 不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 損害および加害者を知ったときから3年間
  • 不法行為のときから20年間
上記のうち、いずれか早く経過する期間(民法第724条、第724条の2)

後遺症が残ったケースでは、後遺症の症状固定時、死亡したケースでは、死亡時が起算点となることに留意しましょう。

時効完成を阻止するには、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などが必要となりますので、できる限り早めに弁護士へご相談ください。

6、まとめ

ご自身やご家族に思いもしなかった医療ミスが起こり、「どうしたら良いのか」「なぜこんなことが起きてしまったのか」と、悲しみや不安などを抱えている方もいるでしょう。

被害に対する損害賠償請求を考えても、「医療訴訟は勝てない」という情報から、一歩踏み出せない方も多いはずです。しかしそれには、示談や和解などの数字が含まれていません。

ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、医療事件に関して知見のある弁護士が親身になってご対応いたします。当事務所は弁護士兼医師との連携体制が整っているため、今後に向けて適切な見立てを行うことが可能です。

医療ミスの損害賠償請求は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。個人で立ち向かうことは怖いと思いますが、カルテ開示から示談交渉、訴訟まで、弁護士が一貫してサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階(東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585 [ご相談窓口]0120-056-095
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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