中国人弁護士(律師)コラム

【中国における商業賄賂とリスクマネジメント】中国における商業賄賂とリスクマネジメント -商業賄賂の諸像・旅行-

 近年の中国において、商業賄賂の手段は多様化してきています。海外旅行、海外考察、海外見学、仲介手数料、独占販売契約、陳列費、入場費等があります。これらの手段に関して、今後事例を紹介しながら説明します。ご周知のとおり、某大手外資製薬会社(以下「送り手」と言います)の中国における商業賄賂案で使われた商業賄賂手段の一つは旅行でした。

1、上海市臨江旅行社と送り手

 本商業賄賂案件の発端は上海市にある旅行会社臨江旅行社(以下「臨江旅行」と言います)でした。臨江旅行は2006年に設立した会社であり、非常に小さな旅行会社です。送り手の商業賄賂案が発覚するまで、その名を知る人はほとんどいませんでした。臨江旅行も設立してから実際旅行業務はほぼ行っていないと言われており、他方営業利益が設立当時数百万人民元から何年間で一気に数億円まで上昇しました。この奇異な数字が事件の発端でした。当局は臨江旅行の営業利益の尋常な上昇に気を付き、調査したとこと、送り手を含むいくつかの製薬会社と関係あることを分かりました。このような、旅行会社を通して、商業賄賂行為を行う場合、送り手、旅行会社、受け取り側の三者が絡みます。

2、送り手の目的

 商業賄賂を贈る側としては当然利益の見返りを期待します。例えば、送り手の場合、医者が最終的に送り手の製品を多く使ってもらいたいわけです。しかし、直接現金或いはその他の手段でものを送ると、財務上の処理が難しくなり、不当利益の供与がすぐに発覚してしまいます。そこで、思いついたのは、間に旅行会社を挟む方法でした。旅行会社も様々な方法を工夫します。

3、会議、シンポジウム等

 送り手が、旅行会社を通じて商業賄賂を贈る手段でよく見られるのは、外地における学術会議、シンポジウム等です。具体的に、送り手は外地における会議或いはシンポジウムの手配を旅行会社に依頼し、代金を振り込みます。旅行会社は、会場等を用意し、送り手は、受け取り側に講師費を渡します。受け取り側に許与する不当利益の名目も多様です。講師費以外にも、会議参加の名目で実際旅行させたり、旅行先の買い物代を負担したりするパターンもよく見られます。
 しかし、上記のような行事の際、国際的に大手会社は本来入札する形で旅行会社を選択しますが、臨江旅行のような無名でも入札に成功できるためには、送り手にリベートを送る必要があります。三者の関係は複雑に絡み合っています。

4、旅行会社のリベート

 送り手は、自社の利益のために、受け取り側に利益を供与するために、旅行会社を使いますが、旅行会社も入札に成功するために送り手の管理層にリベートを供与します。
 旅行会社は如何に利益を作り、送り手の管理層に不当利益を許与するでしょうか。法律上明文規定が置かれていないため、旅行会社は、ホテル、輸送会社等から手数料等の形で利益を得ることができます。また、旅行会社は、実際行われていない会議費等の名目で代金を請求します。ほかの例では、旅行会社が架空の請求すら行うと言われています。旅行会社はこのような手口で得た利益を送り手の管理層個人にリベートします。

5、注意点

 近年商業賄賂に対する取締りが強化されており、実際の摘発も多発しています。商業賄賂行為に関する法制度に不備があると言われている現状では、正当な会議等の行事も思わぬ調査にあうこともありうると思われます。社内規則を完備し、手続をしっかり行うことは大事であろう。