中国人弁護士(律師)コラム

【中国における商業賄賂とリスクマネジメント】中国における商業賄賂とリスクマネジメント -調査員が調査するもの-

 前回は取締りの発端に関しても触れました。ちなみに、商業賄賂行為等の不正競争行為に対して、金額がいくらに達すれば、調査されるの、という疑問が生じると思います。しかし、調査開始に関しては金額的基準等ありません。逆に、第三者からの告発があった場合に調査開始しなければなりません。

1、史上最少額の商業賄賂案

 まず、中国で「史上最少額の商業賄賂案」と言われている案件を紹介したいと思います。例としては、極端な例に思えるかもしれないですが、これは2010年に中国安徽省青陽県にて実際に起きたことです。安徽省青陽県工商行政管理局の職員は、電車ターミナル周辺の小売業者11社を取締りました。その中の一人が、ひと箱コーラにつき三つペットボトルの水と一つのペットボトルのコーラをおまけしたが、これが不当競争にあたるとして1万元の過料を課されました。ちなみに、当時ひと箱コーラは、52人民元(現在約1000円)であり、おまけのペットボトル水は二本合わせて1.8元(現在約35円)とコーラは2元(現在約39円)でした。
 本件は明らかに法の適用が間違っていますが、他方では実際における当局の裁量権の大きさないし濫用をよく表しています。

2、調査員たちが調査する方法及び時期

 商業賄賂行為に関して、実際調査はどのように行われているでしょうか。商業賄賂行為は秘密裏に行われており、調査員たちも調査してそう簡単には証拠が見つからないことを重々承知しています。業種によって覆面調査を行うこともあります。お客を装い、その実態を録画する等の手段で証拠収集したりします。また、綿密な事前調査の後、抜き打ち調査を行います。抜き打ち調査の場合、調査対象もその対応に追われ、緊張のゆえにしばしば重要な資料を全般提出してしまう場合が多いです。もう一つの方法は、工商行政管理局一機関で調査相手に対応できないと判断した場合、検察院等の強制措置を講じることができる行政機関と提携して、調査を行うこともよくあります。

3、調査員たちが調査するものとは

 実際調査員たちは調査相手の何を調査するのでしょうか。一般的には、会社の財務帳簿を調査します。特に、「その他買掛金」項目に会議費、賛助費として大きい金額が記載されている場合です。また、「販売コスト」項目における広告費、労務費等の支出も調査対象になります。実際に在庫棚卸を行うことで帳簿との整合性を調査することもあります。値引き販売の税務上の処理について、実際値引きはあったかどうかに関して、調査対象の取引相手に対して調査を行うこともあります。さらに、社員旅行の名目で実際贈賄する相手の旅行代を負担することもよくあるため、調査員は会社の福利厚生項目にも目をつけてきます。   現場調査の際に調査員たちがよく使うパターンは、「一人に目を離さず、三つのものを必ず調査する」と言われている方法です。具体的には、一人に目を離さずとは、調査対象の主要責任者と会談し、その動きを観察することです。必ず調査する三つのものとは、繰り返しになるが、主要責任者のパソコン情報、経理のパソコン情報及び出納のパソコン情報の三つです。